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J空白県の青森ダービーに思う、
英雄・柴崎岳と津軽vs.南部の誇り。 

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川端康生

川端康生Yasuo Kawabata

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photograph byYasuo Kawabata

posted2018/08/03 10:30

J空白県の青森ダービーに思う、英雄・柴崎岳と津軽vs.南部の誇り。<Number Web> photograph by Yasuo Kawabata

青森ダービーでの一風景。Jリーグ空白県でもサッカーは着実に根付いている。

柴崎のバルサ戦ゴールの日、市長は……。

 東北各藩は戊辰戦争への関わり方(新政府につくか、徳川忠義を貫くか)が遺恨の源になっていることが多いのだが、この両者に関しては関ケ原にまで遡れるというから根っこは深い。その意味では各地で続々新設される興行的(営業的)なダービーとは一線を画す。

 とにかく、ちゃんと歴史的背景のあるダービーマッチであり、「ローカルビジネス」であるJリーグにふさわしい地域間対決「青森ダービー」を見にやってきたのだ。

 小林眞・八戸市長がアキレス腱を切ったらしい。昨秋のことだ。

「9月17日でした。なぜはっきり日付まで覚えているかと言いますと……」と、キックオフ前のセレモニーで挨拶に立った市長は胸を張った。少し誇らしそうにさえ見えた。

「それが柴崎岳選手がバルセロナ戦でゴールを、ボレーで見事なシュートを決めたあの日だったからです」

 拍手喝采である。郷土の英雄がスーパーゴールを決めた日、市長もまたサッカーボールを追っていた。おまけにアキレス腱まで! 首長たるものかくありたし。僕も思わず拍手した。

出身は南部、進学先は津軽だから。

 出身は(もちろん柴崎の)野辺地。まさかりの形をした下北半島の付け根あたり。陸奥湾に面した町だ。地域的にはぎりぎり南部。進学した青森山田は津軽(青森市内)だが、この際、そんなことは超越する。柴崎岳は青森県民のヒーローである。

 

 実は1週間ほど青森に滞在しているのだが、メディアではもちろん、街を歩いていても彼の顔を頻繁に目にする。色んなポスターに起用されているからだ(去年も青函フェリーの中で県警の啓発ポスターで彼を見た)。

 とにかく温泉で隣に浸かっているおじさんが「あなたと呑が飲みたくて♪」と鼻歌を歌うくらいの有名人なのである。

 だから当然、市長の挨拶もこう続いた。

「柴崎選手のワールドカップでの活躍で、本県におけるサッカー熱も高まりつつあります」

【次ページ】 クラブビジネスと地域活性。

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