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J空白県の青森ダービーに思う、
英雄・柴崎岳と津軽vs.南部の誇り。 

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川端康生

川端康生Yasuo Kawabata

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photograph byYasuo Kawabata

posted2018/08/03 10:30

J空白県の青森ダービーに思う、英雄・柴崎岳と津軽vs.南部の誇り。<Number Web> photograph by Yasuo Kawabata

青森ダービーでの一風景。Jリーグ空白県でもサッカーは着実に根付いている。

クラブビジネスと地域活性。

 そうなのである。Jリーグはローカルビジネスだが、サッカーはグローバルスポーツ。世界No.1イベントであるワールドカップでの、地元出身選手の活躍を、クラブビジネスに、そして地域活性にどう結びつけていけるか――それこそがこの夏のJクラブとホームタウンのテーマだったはずだった。

 ところが再開後の話題といえば、敏腕経営者が率いるクラブが呼んだスーパースターに終始。早い話が、ワールドカップをはさんで観客が増えたクラブが見当たらないのが現実である。

 それどころかヴィッセル神戸とのホームゲームを残しているかどうかで喜んだり、悔しがったりするクラブもちらほらと。厳しい言い方をすれば、おこぼれ頂戴ビジネスと揶揄したくなる受け身体質にレッドカードを突きつけたい気分である。

 もちろん同情はする。国内組がいない。日本代表は海外組で占められる。チームにワールドカップ選手がいない以上、結びつけようがない。確かにそうかもしれない。

W杯出場を決めて中田英寿が言ったこと。

 かつて日本代表が初めてのワールドカップ出場を決めたとき、ジョホールバルのピッチで中田英寿は「代表は盛り上がったのでJリーグもよろしくお願いします」と言った。

 当時は海外組はいなかった。全員がJリーガー。だからワールドカップ後のスタンドはどこも代表選手を見ようと盛況だった。そこに新規顧客獲得のチャンスがあった。だが、今回は花束贈呈のセレモニーさえほとんど行えない。

 しかし、時代は止まってはいないのである。監督や選手が最先端の戦術やスタイルを学び、それを自らのチームやプレーに落とし込んでいるというのに、フロントだけがアップデートを怠っていていいはずがない。

 選手はグローバルマーケットの中にいる。自らの価値を認められた選手は、より高いステージに進んでいく。一方、フロントは地域に根付かなければならない。だからと言ってホームタウンに安住していいわけではないのである。

 海外組は今後も増えるだろう。「この地域にはサッカー文化がない」としたり顔で言っていれば同情される時代も、そう長くは続かないだろう。

【次ページ】 両チームの監督に見えるもの。

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