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ブーイング覚悟で選んだ「敗戦策」。
西野監督の決断がもう1戦を生んだ。
posted2018/06/29 12:45
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
それは、日本代表がW杯で初めて浴びる種類のブーイングだった。
観衆から不満を示されたことはもちろんある。明らかなファウルで相手を止めたり、判定に不服な態度を取ったりすることが、ブーイングを呼んだことはあった。相手の守備ブロックへ飛び込まずボールを動かすだけの時間が退屈を誘い、耳障りな音色がピッチに降り注いだこともあった。
6月28日のポーランド戦で日本が受けたブーイングは、そうしたものとはまったく違う種類のものだった。
59分の失点で2試合終了時点の首位から3位へ転落した日本は、コロンビアがセネガルからゴールを奪ったことで2位に返り咲く。セネガルとは勝点だけでなく得失点差も総得点も同じで、当該成績も2-2のドローだった。
両者の運命を隔てるのは、警告と退場の数をポイント化したフェアプレーポイントだ。日本はここで、セネガルを上回っていた。
同点に持ち込めば勝点は「5」となり、自力でベスト16へ進出できる。しかし、攻撃を仕掛ければボールを失う可能性が生じる。残り時間が減っていけば、ボールを奪い返すためのアプローチは激しさを増す。主審が胸ポケットから黄色や赤のカードを抜き出し、日本の選手に差し向けるかもしれない。
グループ最終戦は、常に条件戦である。
ポーランドとコロンビアが勝点3をつかめば、グループ首位は勝点6のコロンビアで、日本は勝点4のままでも2位になることができる。コロンビアがリードを守り切ることを前提として、フェアプレーポイントのアドバンテージを保つために0-1の敗戦を受け入れるか。
それとも、リスクを冒してでもゴールをもぎ取り、自分たちの力で2位の立場を死守するのか。残り時間が10分を切ったあたりから、日本は難しい選択を迫られた。