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金本阪神の原点とは何だったのか。
藪恵壹が見たタイガースの交流戦。 

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藪恵壹

藪恵壹Keiichi Yabu

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photograph byKyodo News

posted2018/06/22 10:30

金本阪神の原点とは何だったのか。藪恵壹が見たタイガースの交流戦。<Number Web> photograph by Kyodo News

金本監督になってから阪神の交流戦成績は、Bクラスだった一昨年が7勝11敗と負け越し、2位となった昨年は10勝8敗と勝ち越した。

「各駅停車」の攻撃なのが問題では。

 交流戦でこんなシーンがありました。6月9日のロッテ戦(甲子園)、タイガースは7回にヒット3本でノーアウト満塁としましたが、結局、得点を奪えませんでした。

 満塁から打てなかったこと、ランナーを返せなかったことも問題なんですが、それよりも、ヒット3本で1点も取れない「各駅停車」の攻撃ということも問題なのではないか、と思います。

 この時、先頭打者として塁に出たのが中谷でした。彼は、バッティングに非凡なものがあって、確実性も長打力もある。すごく能力が高いんですが、そういう選手がシビアに、先の塁、先の塁を狙っていく、突きつめていくということが強いチームの条件だという気がします。

 振り返ってみると、金本知憲監督が就任した当初、走塁の意識というのはチームに徹底されたはずです。たとえ、ヒットが打てなくても1つでも前の塁に進むことで、得点できる確率が高くなる。誰でもできることをしっかりとやる。2016年も、2017年も、監督のそういう考えが浸透して、タイガースの野球もかなり改革されたように見えました。

首脳陣は誤算だらけという心境か。

 ただ、この2年間はできていたことが、今シーズンはだんだん薄れてきているように感じます。

 金本阪神になって3年目です。4位、2位ときて、ホップ、ステップ、ジャンプの年だったはずなんですが、ここまでは「3年目の誤算」という表現になってしまうでしょう。ベンチからしてみれば、本当に誤算だらけという心境ではないでしょうか。

 今年の目玉だった助っ人ウィリン・ロサリオが不振で、二軍に落ちて、そこへエフレン・ナバーロという新外国人選手を獲得しました。これでロサリオに変化が生まれるかもしれないし、ナバーロが打つかもしれない。まだ首位・広島の背中は見えています。フロントも、現場も必死だと思います。

 ただ、打つことよりも、金本阪神の原点だったものを取り戻すことの方が、より勝利をつかむ近道なのではないか。タイガースが苦しむ交流戦を見ていて、そんな気がしました。

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