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西野監督が甦らせた「当事者意識」。
選手を大人扱いすることの効果は。 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2018/06/17 11:00

西野監督が甦らせた「当事者意識」。選手を大人扱いすることの効果は。<Number Web> photograph by Getty Images

ロシア・カザン入りした日本代表。ここへ来てチームの雰囲気が右肩上がりになっていることはどうやら確かなようだ。

当事者意識を取り戻した選手たち。

 だが、西野監督に代わり、発言できるようになったことでそうも行かなくなった。思考停止からの脱却、失われていた主体性および当事者意識の回復ということが、この2試合でようやく形になりだしたのではないか。

 例えばスイス戦前、本田圭佑や乾貴士ら多くの選手が「確認したいのは守備」と口を揃えた。そして試合後、本田は個人的な危機感を口にしつつも、それとは別にチームとしての守備について「負けていて手応えというのもおかしな話かもしれないですけれど。ブロックを作るところはやれていた。そこまで危ないシーンが多かったわけではないと認識している」と認めている。

「個人的には結果が欲しい」と話していた長谷部誠は「結果として非常に残念な気持ちが強い」と敗戦を受け止めつつも、「試合内容、特に守備の部分で良くなってきていることがあると思う」としている。

 試合前後で流れを汲んだ質問が出ているからそれに答えているというよりも、本人たちのなかで問題点が整理されている印象だ。

選手を大人扱いするのも西野流。

 メンバーを入れ替えて臨むことが言明されていたパラグアイ戦前は次のようだった。

 乾貴士は、スイス戦に続いて「守備。攻撃につながるような守備。急造チームなのでバルセロナのように崩せるわけではないのだから、まずは守備」と繰り返した。

 実際の試合で2得点した後も「みんなが走りきったのが良かった。自分たちがチームとしてやらなくてはいけないことがはっきりしていた」とチームとしての問題意識と、試合内容が直結していることをうかがわせた。

 この日先発した柴崎岳の「スイス戦から、中盤でのブロック形成と前線でのプレスというやり方がうまくいっているように思う。それで流れが掴めた」という発言も、彼らの意思疎通をうかがわせる。時期的なこともあるのかもしれないが、どの選手も、敗戦後も勝利の後も、前向きに話しているのが印象的だ。

 直接試合とは関係ないが、スイスのルガーノでスイス戦が行われた翌日、チームはオーストリアのインスブルックで一旦解散した。インスブルックはキャンプ地であるゼーフェルトまで25km程度の距離。平均年齢28歳を超える大の大人たちをそこで自由にさせるのは自然なことのように見えるかもしれないが、ハリルならあり得なかったことだ。

 選手たちはこの自由になった時間の使い道を自分たちで選択した。街で過ごした選手も、宿に戻る選手もいたという。この休みの翌日、長友佑都の髪型は“スーパーサイヤ人”になっていた。

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