炎の一筆入魂BACK NUMBER
沢村賞の才能秘める広島・岡田明丈。
異常に低い被打率を誇る球質とは?
posted2018/05/14 12:15
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
人は未完成なものに、どこか魅力を感じる。この先が気になってしまう……と引き付けられる要因を「ツァイガルニク効果」と呼ぶらしい。
プロスポーツの世界でも完成された選手のパフォーマンスに胸を躍らせながら、若い選手の才能にさまざまな未来像を描くことがある。
プロ野球のセ・リーグペナントレースで首位を快走する広島にも、そんな楽しみがある。ファンは完成度の高い打線の攻撃力に心躍らせながら、若い選手が多い投手陣の投球にはやきもきしながらも「その先」の完成形に夢を描いているのではないか。
その中でも、最高傑作とも言える「未完成」の投手こそ、岡田明丈だろう。5月14日現在、6試合に先発し、4勝0敗、防御率3.40の成績をマークしている。
沢村賞を受賞できるほどの才能を秘める。
投手主要成績ではパッとせず、先発投手の指標のひとつであるクオリティースタート(投球回6回以上、自責点3点以下)率も67%と高水準なわけでもない。
特筆すべきは被打率だ。
セ・リーグの先発投手では唯一の1割台。1割9分6厘にとどめている。ここ最近でシーズン通して被打率を1割台に抑えたセ・リーグの先発投手は、昨季の巨人・菅野智之くらいしかいない。そして、彼は沢村賞を受賞している
もちろん、岡田も沢村賞を受賞できるほどの可能性は秘めている。ただ、まだ「秘めている」という域は超えない。
なぜなら、まだ投手として「未完成」だからだ。