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メドベデワ、ザギトワを生んだ
ロシア“虎の穴”潜入取材の舞台裏。
posted2018/02/08 08:00
text by
栗田智Satoshi Kurita
photograph by
Olga Skorupskaya
取材は欧州選手権直前の1月中旬のことだった。
平昌五輪メダル最有力候補のエフゲニア・メドベデワとアリーナ・ザギトワ。彼女たちが所属するロシアのトップアスリート養成学校「サンボ70」の強さの秘密を探るべく、現地潜入取材を行うというのが今回のミッションだ。
サンボ70のフィギュアスケート部門は「コニョク・チャイコフスコイ」と「フルスタリヌィ」の2つがある。2人が練習しているのは後者のフルスタリヌィで、スケートリンクはモスクワの南西、中心部から車で40分ほどのところにある。
取材当日。入り口でセキュリティゲートをくぐり、屈強な警備員にカバンの中身を調べられ、パスポートの顔写真と名前を確認され……といった手続きを済ませてようやく中に入る。
というとずいぶん物々しく聞こえるかもしれないが、ロシアの日常風景である。
ロシアの虎の穴は……名古屋のスケートリンクと似てる!?
いったん中に入ると、そこはいたって普通のスケート施設だ。
こぢんまりとした1階ホールには受付、ロビー、売店がある。通路奥にスタッフルームとロッカールームが並び、生徒たちはロッカールームを経由してさらに奥にあるスケートリンクへと向かう。
ちょうど午後だったこともあり、学校終わりの小学生ほどの生徒たちがぞくぞくと集まってくる。親御さんたちはリンクサイドで練習を見守ったり、ホールのテーブル席でお茶を飲みながら待ったり、のんびりと牧歌的な雰囲気。なんとなくではあるが、名古屋の大須スケートリンクに似ているかもしれない。
それでも、よく注意して見ていると、ポリーナ・ツルスカヤ、アンナ・シェルバコワ、ダリア・パネンコワ、アナスタシア・タラカノワといった実力ある若手選手がそこここにいて、こちらのテンションもおのずと上がってくる。