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サッカー観戦とARは相性が良すぎ。
松本山雅のスタジアム“拡張”計画。
posted2017/10/01 07:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
「何なの、そのゴーグル?」「ねえ、何が見えてるの?」
9月16日のJ2第33節、松本山雅FC対ザスパクサツ群馬の試合前のこと。十数人のファンが見慣れないゴーグルを装着し、松本の本拠地であるアルウィンのピッチの周りを闊歩していた。
試合の数時間前からスタジアムを訪れていたサポーターが、参加者に声をかけていたのだ。するとゴーグルをかけた参加者は、こう返していた。
「選手視点で、勝利後のあいさつの時にサポーターがどう見えてるかを体験してるんだよ!」
この日、クラブは1つの実験的なイベントを実施した。「アルウィン超体験ツアー」と銘打たれたもので、試合開始前のグラウンドなど普段は選手や関係者しか入れないエリアにサポーターを招待した。その目玉になったのが冒頭のゴーグルに搭載された「AR(拡張現実)」だった。
ここ近年「VR(仮想現実)」とともに、ARは様々な分野で採用されている。装着することで、まるで現実のような体験を味わえるVRと比べて、ARは現実世界に情報を追加することで、楽しみを“さらに広げる”サポートの役割を果たす。
松本山雅はその技術を、ファンサービスに活かそうとしている。それが今回のイベントの狙いだった。
前もって撮影された映像を、スタジアム各所で流す。
クラブ側は前もって撮影された何種類かの映像を用意し、タブレットを使ってスタジアムの様々な場所とリンクする映像をゴーグル上に映し出す。そしてゴーグルをかけてスタジアムを歩くと、その場所とリンクした映像が映し出されるのだ。
一例を挙げると、こうだ。ピッチ入口に到着した際、試合開始直前に松本イレブンが入場する映像を流す。映像だけでなく音声もイヤフォンで聞けるため、選手たちがどんな声をかけあって戦いに臨んでいるかを、まるでチームの一員になったような感覚で体験できる。
他にも正面玄関ではチームバスが到着する様子を見られたり、クラブの歴史が飾られた展示コーナーでは過去の名勝負を動画や写真などで再現し、サポーターからは「ああ、この試合懐かしい!」との声が挙がっていた。