“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
躍進の筑波大、天皇杯8強ならず。
大宮に肉薄も、僅かで大きな隙。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/09/21 12:00
卒業後はジュビロ磐田への入団が決まっている中野。磐田ユースから大学進学し、ふたたび「磐田の黄金時代を作るため」(中野)に戻ることとなった。
得点シーン以外にも、失点のピンチは数度あった。
さらに34分には右からのグラウンダークロスに対し、フリーとなった清水が右足ダイレクトで合わせる。強烈なシュートはバーを直撃した。このシーンも清水と正対していたMF戸嶋祥郎が寄せきれず、清水に自由を与えてしまっている。
さらに40分、清水のミドルシュートが左ポストに当たったシーンでは、寄せてきた筑波大の守備陣のプレスを完璧にフェイントでかわして余裕を持って打っており、GK阿部航斗がわずかに触っていなかったら得点シーンとなっていたはずだ。
「オーバーヘッドシュートのときも、十分に時間を与えてしまっていた」(鈴木大)
80分、交代出場のMFマテウスに左サイドを突破され、マイナスに折り返されると、ゴール前では清水を完全フリーにしてしまった。折り返しがブロックに入った山川の膝に当たって、こぼれた時に誰も寄せに行かなかった。結局、ボールの軌道を良く見ていた清水がオーバーヘッドシュートを決めている。
このシーン、簡単に左サイドを破られたことに加え、清水の後方にいたDF野口航がより強度を持って寄せていれば、楽にオーバーヘッドを打たれることはなかったはずだ。
相手CBは筑波大のFWに足を振る時間を与えなかった。
「サッカーにおいて、攻守両面で一番相手にやらせてはいけない場所はゴール前。もちろん清水選手が自分の間合いとシュートを打つための時間を作り出せる優れた選手だったこともありますが、そこに対して僕らがしっかりと寄せきれなかったことが大きな問題でしょう」
こうはっきりと言い切った鈴木大に、「じゃあCBの目から、味方のFW陣は『シュートを打つ時間』を与えられていたと思う?」という質問をぶつけてみた。すると「正直、ほとんどなかったと思います」と即答し、さらにこう続けた。
「FW中野(誠也)さんがゴール前でボールを受けたときは、バーに当たるようなシーンが1試合に3回くらいあるけど、今日は体勢を崩されてギリギリでバーに直撃した1本しかなかった。それは相手のCBの上手さの証拠だと思う。バイタルエリアは凄く空いていて、ウチのトップ下の選手なども自由に前を向いてプレーできていたはずなのですが……でも、足を振る時間は与えてもらえなかった、ということです」
その言葉通り、筑波大はゴール前の展開でしっかりと足を振り切って枠内シュートを打てたのは、冒頭で触れた72分の中野のシュートだけだった。