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直前の優勝にも松山英樹は騒がない。
変化よりも、地力こそがモノを言う。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYoichi Katsuragawa

posted2017/08/10 07:30

直前の優勝にも松山英樹は騒がない。変化よりも、地力こそがモノを言う。<Number Web> photograph by Yoichi Katsuragawa

今シーズン最後のメジャー、全米プロ。松山英樹はもちろん優勝候補だが、それ以上に重要なのは積み重ねた彼の成長そのものだ。

ホール以上に影響が大きいのは新しい芝?

 これまであったパー5(5番)が1つ減り、パーは72から71に変更された。オーガスタナショナルGCを思わせる背の高い松の木は数多く切られ、風がかつてよりもよく抜けるかもしれない。

 優勝した翌日の月曜日にコースチェックを開始した進藤大典キャディは「ホールが所々変わったことよりも、張り替えた新しいバミューダ芝が気になる」と話した。

 ラフの長さは前週のベント芝がメインのファイヤーストーンCCよりも短い。それでも「バミューダとティフトンのラフでクラブが抜けにくい。長くはないけれど、ボールがスポッと入る長さ。抵抗がかなりあるから、英樹のパワーでもなかなかでないことがあるかもしれない」とティショットが思うようにいかなかった場合の対処を警戒した。

グリーンマイルと呼ばれる米ツアー屈指の難ホール。

 しかしながら本来的に目をやるべきは、改造を施していない部分かもしれない。

 人は変化に敏感だ。そうでなければいけないはずだが、変化に対応することに固執するあまり、積み上げてきたものを無下にしては本末転倒でもある。

 月曜日に午前中から初体験のイン9ホールを回った谷原は「先週よりも大変だ……」と嘆いていた。7600ヤードの18ホールは距離が十分にあるだけでなく、グリーンが硬く、速い。当たり前のようで、これこそがこのクエイルホロークラブの難しさの本質だ。

 同コースの地下にはオーガスタナショナル等と同じように、水はけを良好にするサブエアシステムが搭載され、雨が降っても湿ったグリーンを短い時間で乾かしてくれる。するとどうなるか。水を含んだフェアウェイではボールが転がらず、飛距離が出ない。長いクラブを持たされる上に、グリーンは硬いためボールが止まりにくい。

 クエイルホロークラブで有名なのが、フィニッシュにかけての3ホール。16番パー4、17番パー3、18番パー4の通称“グリーンマイル”は米ツアーでも屈指の難度を誇る「連続する3ホール」。“モンスター”の異名を持つ前週のファイヤーストーンCCを引き合いに出して谷原は言った。「ここはモンスターより、モンスター」と。

【次ページ】 変化に目が行くが、勝負でモノを言うのは地力。

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