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登板機会を自ら手放した松坂大輔。
彼は変わってしまったのだろうか。

posted2017/04/26 07:00

 
登板機会を自ら手放した松坂大輔。彼は変わってしまったのだろうか。<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

3月25日のオープン戦が最後の登板となっている。4月は登板予定の二軍戦が2試合続けて雨天中止となる不運も。

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Tadashi Shirasawa

 筑後の練習場に不穏な空気が漂ったのは、4月12日の昼過ぎのこと。4月15日の一軍での先発に向けて調整していた松坂大輔が、3日後のシート打撃への登板をキャンセルして引き上げてしまった。

 それは、日本中の野球ファンが心待ちにしていた3日後の登板が難しくなったことを意味する。ましてや今季はキャンプから順調に調整を重ね、3月25日のカープとのオープン戦では7回ノーヒットの快投。この試合で動くボールを駆使した巧みな投球術を見せたことから、「モデルチェンジで復活か」と注目を集めていた矢先のことだった。

 誰よりも悔しそうな表情を浮かべていたのは、他ならぬ松坂だった。あまりの落胆ぶりに、その場にいた選手や記者たちはしばらく声を掛けることができなかったという。

 松坂の元気な姿を見られなくなって、もう久しくなる。かつては周囲が止めてもマウンドを譲らなかったような投手が、今では登板のチャンスを自ら手放してしまうようになった。その投球スタイルと同様に、松坂は変わってしまったのだろうか。

「投手のリスク」と聞いて、投げ続けた姿を思い出す。

 遡ること2カ月前、Number編集部はWBCやセンバツ高校野球の取材に追われていた。両大会に共通していたのは、「投手のリスク」というトピック。WBCは各国の投手陣にメジャーリーガーの辞退が相次ぎ、センバツでも日程が進むごとに球数制限導入の議論が活発になっていく。

 そのときに思い浮かんだのは、甲子園でも、プロ野球でも、メジャーでも、国際大会でも、ひたすらに投げ続けていたあの投手の姿だった。

 松坂がそういう姿勢を貫いていたせいか、同学年として常に比較されてきた「松坂世代」の面々もまた、チームのために身を削ってきた選手が多いように思う。

 ここ数年で木佐貫洋や新垣渚といった同世代の中心選手たちが引退し、今季開幕をNPB球団所属で迎えた現役選手は19人。今年度で37歳となる彼らはベテランとなった今、野球に対してどんな思いで向き合っているのか。

 そんな興味が発端となって、「2017年の松坂世代」の取材が始まった。

【次ページ】 松坂の存在は、想像以上に大きかった。

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松坂大輔
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