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なぜ宇賀神友弥は浦和で不動なのか。
平川から受け取り、関根に渡す愛。
posted2017/04/21 11:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
URAWA REDS
2012年に浦和レッズのミハイロ・ペトロビッチ体制がスタートして以来、今も変わらずコンスタントに活躍するのは4人しかいない。
W杯出場経験がある主将の阿部勇樹、サンフレッチェ広島時代から監督に重用されてきた柏木陽介と槙野智章、そして「無印」の宇賀神友弥だ。
A代表のキャップ数はゼロ、年代別代表入りの肩書きもなし。宇賀神の経歴は、「日の丸経験者」がズラリと並ぶ浦和では異色と言ってもいい。
次から次に若きエリートや脂の乗った実績者が加入してきても、左アウトサイドを見ると、いつも背番号3が走っている。今季、チームは連戦の疲労を考慮し、積極的にターンオーバー制を採用しているが、宇賀神はリーグ戦、ACLで全試合スタメン出場(4月21日時点)。「僕は特に身体能力、テクニックに秀でているわけではないけど……」と苦笑しながらも、定位置を確保してきた自負はある。
「監督の求めていることを理解し、考えてプレーしている」
にんまり笑う顔には、充実感がにじむ。数字に表れない仕事は、チーム内で評価されるところだ。
脇役でも、おとり役でも、見てくれる人がいる。
4月16日のFC東京戦では粘り強く守り、1-0の勝利に貢献した。先制ゴールにも地味ながら絡んでいる。カウンターの形でラファエル・シルバがドリブルで運ぶと、左サイドのスペースへ猛烈な勢いで駆け上がった。次の瞬間、ラストパスは中央を走る興梠慎三の足元にぴたりと収まり、先制点が生まれた。
試合後、取材エリアでゴールを決めた主役の周りに黒山の人だかりができるなか、「脇役」を囲むのは数人の記者のみ。すぐにその人もはけると、静かな口調で得点シーンを振り返った。
「あそこで僕がスプリントしたから、相手のディフェンダーも少し迷って、パスが通りやすくなったと思う」
闇雲に走っていたわけではない。おとりの動きだ。影の仕事に気が付かない人も多いだろう。それでも、見てくれる人はいる。「堀(孝史コーチ)さんはボールに関与しなくても、『あの動きは良かったぞ』と言ってくれるから」と口元を緩める。