ニッポン野球音頭BACK NUMBER
21歳の野球選手が僧侶的な食生活。
DeNA関根大気に漂う知性、向上心。
posted2017/01/17 07:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
1月7日、ベイスターズの2016年シーズンの舞台裏に密着した球団公式ドキュメンタリー『FOR REAL ―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―』の完成披露特別上映が横浜市内で開催された。
作品の後半、クライマックスシリーズのファーストステージ第3戦で死球を受けた梶谷隆幸がベンチ裏へと下がってくるところをカメラは捉えている。ボールが当たった左手薬指の骨は折れていた。痛みゆえか、悔しさゆえか、手を震わせて背中を丸める梶谷を見た指揮官アレックス・ラミレスは、「タイキね」と一言。名を告げられた若者は「はい」と静かに応じると、すぐさまヘルメットをかぶり、ちょっと場違いなくらいの軽やかさでグラウンドへと駆け出していく――。
このワンシーンが、タイキこと、関根大気の“REAL”だった。
与えられた役目は最終盤の代走か守備固め、あるいはこの日のように負傷したレギュラーの代役か。
そんな役回りを演じたシーズンを、本人はこう表現した。
「させてもらった」「なってしまった」の1年。
「オープン戦で肩を脱臼してしまい、なんとか1カ月で復帰できて、そこからずっと一軍に帯同させてもらった。帯同させてもらって、多くのことを学ばせてもらった1年に、なってしまった」
高卒3年目の21歳は、「させてもらった」と「なってしまった」の部分で語気を強めた。
故障が明けて一軍に合流したのが4月30日。それ以来、二軍降格はなし。ほぼフルシーズンを一軍で過ごしたのはプロ入り後はじめての経験だった。
だがそこに、自分の力でつかみ取った感覚はない。あくまで“与えていただいたもの”という意識があるから、振り返る言葉に微かな卑屈さと悔しさがにじみ出る。
ベイスターズの選手の中でも、関根の向上心は随一かもしれない。生きていくために野球をやっているというより、野球をするために生きている。