詳説日本野球研究BACK NUMBER
菊池雄星のメジャー挑戦はまだ早い。
大谷翔平と差がある「内角の意識」。
posted2017/01/17 11:30
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
NIKKAN SPORTS
西武の左腕、菊池雄星がポスティングシステムでのメジャー移籍を球団に直訴したと伝えられている。
花巻東高時代から菊池のメジャー好きは有名で、日本球界を経ずにメジャー球団入りすることを公言していた時期もある。
左腕から投じる150キロを超えるストレートは日本球界でもトップクラスの威力で、6年目の2015年9月13日のロッテ戦では、ペナントレースでのプロ野球史上左腕最速となる157キロを計測した(2012年7月28日のウエスタン・リーグ、ソフトバンク対中日戦でソフトバンクの川原弘之が計測した158キロが日本球界では左腕の最速)。
110キロ台前半のカーブと130キロ台中盤のスライダーのキレも一級品で、1つ1つのボールの威力は超一流。ただし……と注文がつくのは43勝36敗(実働6年)という成績が、ボールの威力ほど飛び抜けていないからだ。
メジャー移籍投手たちの成績と比べると。
1試合(9イニング)平均7.7被安打、7.3三振、4四死球が、1年平均では7勝6敗、防御率2.92になってしまう。私の「成功選手」の基準が通算50勝で、メジャー挑戦をぶち上げるには物足りない数字である(以下、球団名横の年齢は渡米した年に迎える年齢)。
石井一久(ヤクルト→'02年ドジャース) 29歳、78勝46敗、防御率3.38
松坂大輔(西武→'07年レッドソックス) 27歳、108勝60敗、防御率2.95
井川 慶(阪神→'07年ヤンキース) 28歳、86勝60敗、防御率3.15
ダルビッシュ有(日本ハム→'12年レンジャーズ) 26歳、93勝38敗、防御率1.99
田中将大(楽天→'14年ヤンキース) 26歳、99勝35敗、防御率2.30
前田健太(広島→'16年ドジャース) 28歳、97勝67敗、防御率2.39
以上は、ポスティングシステムを活用してメジャーに移籍した6人の、渡米時点でのNPB通算成績である。石井の78勝は例外で、90勝以上がメジャー挑戦の目安と言っていい。菊池はというと、現在までその半分にも満たない43勝にとどまっている。