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松坂大輔は復活を絶対に諦めない。
プエルトリコで見せた意外な球威。

posted2017/01/16 11:30

 
松坂大輔は復活を絶対に諦めない。プエルトリコで見せた意外な球威。<Number Web> photograph by AFLO

ホークスとの3年契約も残り1年。登板は昨季の1試合に留まっている。9月に37歳となる「平成の怪物」の復活はあるのか。

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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AFLO

 米国の自治領であるプエルトリコのカロリナという町は、首都サンファンから車で15分あまりの内陸部にある。ビーチ沿いに建ち並ぶリゾート地の雰囲気は皆無で、少し寂れたような小さな住宅が建ち並ぶ地域だ。

 2016年の12月、ソフトバンクの松坂大輔は、そこを本拠地とするGigantes de Carolina(カロリナ・ジャイアンツ)という冬季リーグのチームでプレーしていた。

「誰に何を言われようが、自分を信じて進むだけですからね」

 ある日の試合後、彼はそう言った。とくに力を込めるわけでもなく、何かに抗っているわけでもなく、自然とそう口にした感じだった。

「次に進むためにプエルトリコに来たわけですけど、根底にあるのは、もっと、野球がうまくなりたいという気持ちだと思います。そのためにまだまだできることはいっぱいあると思ってます」

 その言葉は、冬季リーグでの彼の姿とリンクしていた。「右肩手術からの完全復活を目指す」と書けば悲壮感が漂っていそうなものだが、マウンド上での凛とした彼の姿は、そういった否定的な響きとは全く別のものだった。

漫画的な“ヒーロー像”は崩れても。

 松坂大輔はこれまで、やれ投球フォームが変わっただの、やれ速球のスピードが落ちただのと、いろいろ言われ続けてきた人だと思う。そういった物言いは、投手の本質を遠ざける。なぜなら、彼らの使命は「打者をアウトに取ること」であり、「理想の投球フォームで投げること」でもなければ「速い真っ直ぐを投げること」でもないからだ。

 私のようなメディアも含め、いろんな人が好き勝手に「松坂大輔」を語ってきた理由はよく分かる。高校野球の夏の大会、決勝戦でのノーヒットノーラン。イチローとの初対決の「自信から確信に変わりました」という名セリフ。日本屈指のスラッガーたちとの真っ向勝負。WBC日本代表における絶対的なエースのイメージ。そしてメジャーデビュー年にレッドソックスのワールドシリーズ優勝に貢献した雄姿……等々。

 ほとんど漫画的とさえ言えるほどのドラマを演じてきた“ヒーロー像”が崩れてしまったことに、周囲が悲嘆したり落胆しても不思議なことじゃない。

【次ページ】 工藤監督「絶対にあきらめちゃ、ダメだ」

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