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アキレス腱断裂、戦力外通告の悲劇。
元ロッテ大松尚逸が選んだ「浪人」。 

text by

永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/12/06 11:00

アキレス腱断裂、戦力外通告の悲劇。元ロッテ大松尚逸が選んだ「浪人」。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

かつて幕張の空に鮮やかな弾道を飛ばしていた大松。スタジアムに再びアーチを描く日が来るか。

11月に入っても、右足を引きずったままだった。

 11月初旬、大松はまだ右足を引きずりながら歩いていた。

 聞けば、これは怪我の痛みではなく、これまで使ってこなかった腱に負荷をかけているので、慣れないうちはこうした症状が多少出るのだという。地面からの力を指先やバットへ伝える野球という競技において下半身の具合はとても重要だ。

 たとえ軽い捻挫であっても箇所によっては伝える力が半減する、そんな話を耳にすることもある。それがアキレス腱断裂ともなれば、どれだけ大変なことだろう。まるで想像がつかない。大松が現在の怪我の回復具合について語る。

「ジョグしてキャッチボール、ティーバッティング、フリーバッティングまでは全て出来ているので、体の状態はかなり順調ですよね。ここからさらに状態を上げていくには細かな動きだとか、走るのもジョグから徐々にスピードを上げて行くんですけど、11月末でちょうど術後6カ月になるので、そこで初めて一般的に言われる完治と呼べる状態に戻るんです。再断裂の危険性もなくなるので、走ったりできるようになる。そこまで戻らないうちにダイナミックな動きをしてしまうと今度は逆足の方に来てしまう。だから今は動きをチェックしながら、ギリギリのところでやっている状態です」

野球をやりたい気持ちは1%でも残っているなら……。

 月が替わって12月に入り、現在はランニングのスピードを上げたり、12月中旬にはスパイクを履くことも可能になるという。来年の1月にはさらに強度を上げて、2月の春季キャンプに合わせて万全の状態に仕上げたい。そう考えている。

「それでも難しいのは分かっています。実戦からも遠ざかっているんでね。独立リーグとかそういう場所で自分が動けるのをアピールするのも一つの手かなと思います。そこでダメならさすがに自分の中でも踏ん切りがつくと思います。野球をやりたいという気持ちがまだ1%でも残っているのなら……」

 絶望的な怪我から、さらに「戦力外通告」というどん底に突き落とされ、それでもなお這い上がろうとする彼の姿から、我々はきっと何かを学べる。

 そういう意味で彼は、今も立派に“プロ野球選手”としての矜持を示しているように思えてならない。

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大松尚逸
千葉ロッテマリーンズ

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