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嗅覚と正直の男、クローゼが引退。
代表71ゴールは全てエリア内から。

posted2016/11/08 11:30

 
嗅覚と正直の男、クローゼが引退。代表71ゴールは全てエリア内から。<Number Web> photograph by AFLO

日韓W杯での5得点でブレイクしたので、日本でもクローゼは馴染み深い。得点感覚、という言葉の権化のような選手だった。

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遠藤孝輔

遠藤孝輔Kosuke Endo

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 ミロスラフ・ヨゼフ・クローゼ。“ミロ”の愛称で知られるポーランド生まれのストライカーは、祖父の出身地であるドイツで金字塔をいくつも打ち立てた。

 その偉大なる名手が11月1日、ドイツサッカー連盟のホームページ上で現役引退を発表。カイザースラウテルンでデビューした2000年4月から約16年に及んだプロ生活に38歳で終止符を打ったのだ。いわば代名詞だった、あの前転宙返り(ゴールパフォーマンス)はもう見られない。

 ドイツ代表として刻んだのは、ローター・マテウスに次ぐ歴代2位の137キャップ。2013年9月のオーストリア戦では、約40年にわたって最多得点記録を保持していたゲルト・ミュラーに並ぶ68ゴール目を決め、最終的にはそのレコードを71まで更新してみせた。

 とりわけ印象に残るのがワールドカップでの活躍ぶりで、'02年の日韓大会、'06年のドイツ大会でそれぞれ5ゴールをマーク。'10年の南アフリカ大会、'14年のブラジル大会で計6ゴールを上乗せし、ワールドカップの歴代最多得点記録も塗り替えてみせた。

71ゴールに、エリア外から決めたものは1つもない。

 全71ゴールを洗い直してみると、ある事実に驚かされるはずだ。ペナルティーエリア外から決めたシュートが1つもないのだ。語弊を恐れずに言えば、フィニッシュのバリエーションは決して多くない。それでも偉大な金字塔を打ち立てられたのは、絶妙な動き出しやポジショニング、卓越したフィニッシュなど磨き上げた技能があればこそ。なかでもゴール前での抜群の嗅覚は年齢を重ねるごとに研ぎ澄まされていった。

 ゴールの内訳にもう少し言及するなら、得意のヘディングかダイレクトシュートでネットを揺さぶった回数が極端に多い。時間もスペースも限られたペナルティーエリア内で、映画に登場するスナイパーさながらの冷静さを武器に、全体の約8割にあたる56ゴールをワンタッチで記録したのだ。パサーにとって最適な場所にいる(あるいは走り込める)クローゼは、エジルやクロースらドイツ代表のMFを輝かせる触媒にもなった。

【次ページ】 スキャンダルと無縁で、正直すぎる優等生。

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