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実にファイターズらしい優勝の形。
2つの「信じられない」で大逆転。 

text by

熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/09/29 16:30

実にファイターズらしい優勝の形。2つの「信じられない」で大逆転。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

マウンドや打席で見せる表情と、そこから降りた時の表情のギャップが、大谷翔平はとりわけ大きい選手だ。

実にファイターズらしい優勝の形じゃないか。

 今季の優勝にしても、ふたつの「信じられない」なくしては考えられない。

 開幕前にこう予言されたら、果たしてあなたはどう思うだろう。

「昨季、最多勝に輝いたエースが3割20本打つよ」

「抑えのエースがローテの柱になるよ」

 そんなわけないでしょうよ。

 大谷と増井、このふたりの八面六臂の活躍がなければ、ホークスの牙城を崩すことはできなかったはずだ。

 前半戦のエースが、後半戦には強打者となって打線を牽引した。それが土壇場になってふたたび無敵のエースになり、チームを優勝に導く――。実にファイターズらしい優勝の形じゃないか。

 これから先、ぼくたちは2016シーズンの大逆転優勝をどんなふうに語り継いでいくのだろう。

陽岱鋼のビッグプレーを死ぬまで忘れない。

 物語の主役は、やはり二刀流を進化させた大谷。だが、もうひとつ忘れられないことがある。

 それはホークスとの最後の2連戦、9回裏2死ニ、三塁という大ピンチで飛び出した陽のファインプレーだ。

 江川の放った打球が、センター後方にぐんぐんと伸びていく。

 このとき、ぼくはサヨナラ負けを覚悟した。このボールが広大な外野に弾んだ瞬間、逆転優勝も消えてしまうのだと覚悟した。だが次の瞬間、陽がガッツポーズを見せていたのだ。

 それは絶体絶命のファイターズを救うビッグプレーだった。

 メジャーリーグには、《THE CATCH》という名で語り継がれる伝説のプレーがある。それは「完全無欠のプレイヤー」と呼ばれたウィリー・メイズが、1954年のワールドシリーズでセンター頭上を超える大飛球を捕球したものだ。

 信じられない反応と脚力によって、落下点に到達した陽のキャッチ。それはメイズに勝るとも劣らない、鳥肌が立つようなプレーだった。ぼくは死ぬまで、あの瞬間を忘れないだろう。

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栗山英樹
北海道日本ハムファイターズ

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