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森繁和の心の奥には根本陸夫が――。
中日に実力派ドミニカンが集まる理由。
posted2016/06/21 11:00
text by
伊藤哲也Tetsuya Ito
photograph by
NIKKAN SPORTS
ドミニカ共和国への出発前。森繁和ヘッドコーチのスーツケースにはぎっしりと“お約束”の品々が詰め込まれている。
カップ麺に始まり乾麺のうどん、そうめん、麺つゆ、レトルトご飯……。そして現地で寄付するための、使用済みボールまである。
「まあ、滞在している間にこれが全部なくなるから。帰りは、空っぽになったところにドミニカのコーヒー豆を詰め込むだけだからな」
森ヘッドコーチは、もはや恒例行事といえる荷造りをそう笑顔で話す。
2004年オフ。
ドミニカ共和国のウインターリーグ視察のため、初めて同国に足を踏み入れた。
首都サントドミンゴを拠点とし、現地でのエスコート役は西武や巨人でも活躍したドミンゴ・マルティネス。当時の落合監督から全幅の信頼を寄せられ、外国人探しを託された森ヘッドコーチの、ドミニカ共和国との深いつながりがこうして始まった。
「ダイヤの原石がゴロゴロいる」
今でこそ各球団が中南米担当スカウトを置き、NPBでも中南米の選手が急増。11月のウインターリーグ視察は当然の作業となりつつある。
いわば、森ヘッドコーチはその先駆者なのだ。
野球に対して真面目なドミニカンしか採用しない。
ネルソンやブランコのような、安価な年俸での成功例を求めるNPB球団が多い一方で、森ヘッドコーチの選手獲得には明確なポリシーがある。
入国前に、補強ポイントに合う選手を複数リストアップ。もちろん、試合でその選手の動きに鋭い目を光らせるが、それ以上に最重要視する項目がある。
それがこの2点だ。
(1)試合前の練習の態度の姿勢
(2)日本球界で稼ごうというハングリー精神
「メジャーで実績がある選手であっても、練習態度が悪かったり、真摯に野球に取り組む姿勢がなければ獲らない。それとこちらの言うことに対して、聞く耳を持っているか。それが大前提」