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酒井高徳が感じていた「こんなもん」。
消えた向上心は、いかに復活したか。
posted2016/04/12 10:40
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
日本からの長旅を終えたあとのアウェーゲームはつらいものだ。
もちろん、疲れはあった。
しかし、2日のハノーファーとのアウェーゲームに3-0で勝利をつかんだあと、酒井高徳は笑顔を見せた。
「楽しいですね! 今は、楽しいです」
2度も「楽しい」という言葉を口にした。最近の酒井は、これまでとは違う雰囲気をまとっている。
少し前まで、酒井は苦しんでいた。昨年11月の代表戦では、所属するハンブルガーSV(HSV)での出場機会が少ないという理由でメンバーからも外れていた。
一皮むけた。
そんな表現が、今の彼にはふさわしいのかもしれない。ハノーファー戦のあとに、成長した実感があるのではないかと問うと、酒井はこう答えた。
「まぁ……少しは、ね。やっぱり、あまり試合に出られなかった1年弱の期間がけっこう、デカかったです。色々考えさせられたというか。まあそれは、おいおい話します(笑)」
ブンデスの日本人で最も流暢にドイツ語を話せる男。
一体どういうことなのだろうか。
翌週のハンブルクの練習場で、酒井は左サイドバックのポジションでトレーニングメニューに汗を流し、ときおり右サイドバックとしてもプレーしていた。練習が終わればセンターバックのスパヒッチと話し込み、そのあとには他の選手たちとともにリフティングゲームに興じていた。
それはドイツで当たり前に活躍するフットボーラーの姿であり、酒井のことをよく知らない人からすれば、彼が日本からやってきた選手というのはわからないだろう。ドイツでプレーする日本人で最も流暢にドイツ語を話すのは、間違いなく酒井である。