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山田哲人、成功率88.2%で30盗塁。
唯一目標に掲げた盗塁の“緻密さ”。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byKyodo News

posted2015/09/08 11:30

山田哲人、成功率88.2%で30盗塁。唯一目標に掲げた盗塁の“緻密さ”。<Number Web> photograph by Kyodo News

個人記録は、本塁打で9本差、盗塁で6差の1位。打点は2点差、打率が.002差で共に2位(すべて9月7日現在)。

昨季と比べて最も進化した“盗塁”。

 山田のこの油断しない姿勢が、トリプルスリーを実現させたのは言うまでもない。

 昨季、杉村繁打撃コーチと二人三脚で早出特打でのティー打撃を続け、日本人右打者最多となる193安打へと飛躍した。その鍛錬を今季も継続していることに、この数字の価値が現れている。最近でも8月21日から22日にかけての中日戦ではプロ野球タイ記録となる4打数連続アーチを放ち、7月、8月と連続で月間MVPとなった。「手がつけられない」と相手を驚嘆させるのは、山田が類まれな向上心を保ち、研鑽を積み続けているからだ。

 その山田が、今季唯一「30」と明確な数字を挙げたのが盗塁である。

 昨季の15盗塁も少ない数字ではなかったが、より高いレベルの走塁を――と意識改革を促したのが、作戦・内野守備走塁コーチの三木肇と外野守備走塁コーチの福地寿樹だった。

マークがきついなかでも盗塁を決める技術。

「走塁が試合を左右することもあるんだ」

 春季キャンプから、山田は両コーチに専門的な走塁技術を叩き込まれてきた。それは、投手の利き腕や、試合展開、カウント、リードの歩数、スライディングなど多岐にわたる。三木が言う。

「質の高い走塁を目指しているなかで、山田は自分なりに研究、練習をしっかりして、それを試合で活かすというプロセスをしっかりと踏んできています。盗塁が増えるにつれ相手からのマークがきつくなるなかでも、走塁のレベルがだんだんと上がって結果がついてきているのは、彼の取り組みが間違っていない証拠です。それは本人も自信になっていると思いますよ」

 山田も「意識は高くなりました」と自信を覗かせている、進化する走塁技術。それを証明したのが、先の広島3連戦だった。

 3連戦直前では盗塁数が27。「神宮で30盗塁を決めます」と宣言してはいたが、闇雲に走ることはなかった。

 4日の試合では、5回に28個目の盗塁を決めた後の8回にも偽盗を重ね、プレッシャーを与えた。そして、畠山の捕手前のゴロで三塁まで行くぞ、という姿勢を見せたことで相手のミスを誘発し、得点に絡む走塁を見せている。

【次ページ】 優勝と史上初トリプルスリーの三冠王も!?

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