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「相撲人生の最後を楽しませてくれた」
若の里と元付け人・輝の巡業物語。  

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byShoko Sato

posted2015/08/26 10:45

「相撲人生の最後を楽しませてくれた」若の里と元付け人・輝の巡業物語。 <Number Web> photograph by Shoko Sato

若の里(左)と輝。夏巡業での1シーン。2014年11月の初対戦時は、勝った若の里が「身内と戦うような、嫌な気持ちでしたね。もうやりたくないね(笑)」とこぼした。

輝から溢れ出ている“ワカゼキ ソンケイシテマス!”。

 田子ノ浦部屋の付け人によると、輝からは「いつも“ワカゼキ ソンケイシテマス!”オーラがバンバン出ている」のだそうだ。

「相撲に関しては、俺は一切、何も言わなかった。相撲は師匠です。師匠の言う通りにしないといけないもの。あくまでも高田川親方から預かっているだけで、俺は付け人としてお借りしているという立場を絶対に忘れちゃいけない、と思っていましたから。でも、俺なりの関取像――関取はどうあるべきかというのは、教えられたのかな」

 めっきり白髪の増えた39歳の若の里は、かつての自分を重ねるかのように、21歳の艶やかな大銀杏の輝を、眩しそうに見やった。

「あとは頼む、という感じですよ」

「元関脇 若の里忍」の、24年間の涙と汗が染みこんだ襷は、次代にしかと受け継がれた。

 それは、緑濃い田畑が一面に拡がる故郷――亡き父を思う、長くて暑い「最後の夏巡業」でのことだった。

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