甲子園の風BACK NUMBER
「清宮世代」が輝いた今年の甲子園。
学年不問の起用が彼らを成長させる。
posted2015/08/22 10:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Hideki Sugiyama
いつの時代にも、甲子園でスターとなった1年生がいた。
東邦の坂本佳一(1977年)、早稲田実業の荒木大輔('80年)、PL学園の桑田真澄、清原和博('83年)、星稜の松井秀喜('90年)、大阪桐蔭の中田翔(2005年)……。彼らは1年生ながら甲子園に出場したことによって知名度を上げ、高校球界を代表する選手となっていった。
早稲田実業の清宮幸太郎は、高校に入学した時点で、すでにスターだった。
父がラグビー界の名将。自身もリトルリーグ時代に世界を制し、「和製ベーブ・ルース」と脚光を浴びた。衆目の渦中に身を置きながらも、「スーパー1年生」は西東京大会で打率5割と3年生顔負けの数字を残し、チーム5年ぶりの甲子園出場に大きく貢献した。
初めて土を踏みしめた聖地。1年生としては'83年に記録したPL学園の桑田以来、史上2人目となる2本塁打。5試合で19打数9安打8打点、打率4割7分4厘は、申し分ないどころか驚異的な数字である。
当然、メディアは「歴代の名選手たちを超えたのではないか?」と色めき立ち、そんな趣旨の質問を数多くぶつける。
清宮が試合を重ねるごとにパフォーマンスを高められた背景。
しかし清宮は、現状に甘んじることなく謙虚な姿勢を貫くのみだった。
「いやぁ、もう、歴代の方々と比べるとまだまだなんですけど。記録とかを狙っているわけではないんで。打席が多いから打てているだけじゃないですか」
初戦で1安打、2戦目では2安打。そして、3戦目で待望の初アーチを放つなど、スーパー1年生は試合を重ねるたびにパフォーマンスを高めてきた。
清宮はその背景をこんなふうに述べる。
「上級生のみなさんが優しく接してくれますし、試合になればいいところで自分に回してくれることが一番じゃないですか。あとは、こうやってみなさんから注目していただいて、人もいっぱい来てくださって応援団もすごく盛り上げてくれて。最初の試合くらいは緊張がありましたけど、本当にだんだんリラックスして打席に入れて、いい感じで力が抜けてきれいにバットが振れているのがいい結果に繋がっているんだと思います」