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プロスカウトが初戦で去った甲子園。
しかし、スターは確かに存在した! 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byHideki Sugiyama

posted2015/08/21 16:30

プロスカウトが初戦で去った甲子園。しかし、スターは確かに存在した!<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

決勝戦を161球完投、自らホームランを打って勝負を決めた小笠原慎之介。清宮、オコエが話題をさらった大会を最後に“持っていった”。

 初戦を見て多くのスカウトが甲子園球場を後にしたという。

 彼らの今大会の感想は「(指名したい)投手が少ない」だった。ドラフト会議で上位指名されるのは7割近くが投手なので、「投手が少ない」はイコール「不作」ということになる。しかし、野手を中心勢力に置き換えれば今大会は豊作である。投手中心にドラフトを考える、その姿勢そのものを各球団は見直す時期にきているのかもしれない。

 今回は、関東一のオコエ瑠偉(外野手)と早稲田実業の1年生スラッガー、清宮幸太郎(一塁手)が演じたスーパープレーを紹介しながら、100年記念大会となった第97回全国高校野球選手権大会を振り返っていきたい。

 ナイジェリア人の父親を持つ関東一のオコエ瑠偉(外野手)は、試合ごとに異なる顔を見せてくれた。初戦の高岡商で驚かされたのは足である。まず第1打席、打球が一塁手のミットをはじき2メートルくらい後ろに逸れる間に二塁を陥れた。普通の選手なら進塁しようとは思わない状況である。

ストップウォッチで記録した驚異的な三塁到達タイム。

 そして第2打席、おっつけて打った打球が右中間を破るのを見たオコエは、一塁ベースを駆け抜け、跳ぶように二塁を回り三塁へ向かった。ソフトバンクの山本省吾スカウトは「二塁を回ってから4、5歩で三塁に到達したように見えました」と笑みを浮かべたが、私は全然大げさに思わなかった。高校球児はおろかプロ野球の俊足ランナーも及ばないストライドの広さと三塁到達タイムだったからだ。

 私は2002年夏以降、ストップウォッチ持参で野球を観戦し、数え切れないほどの各塁到達タイムを計測してきた。その中で三塁打の三塁到達タイムで最も速かったのは2年前の10.76秒。その俊足ナンバーワン選手は、当時中学生の五十幡亮汰(現・佐野日大外野手)である。

 このタイムを記録した数日後、五十幡は今話題のサニブラウン・アブデル・ハキームも出場した全国中学陸上競技大会の100、200メートルの2種目を制し、中学生チャンピオンに輝いている。この五十幡が計測した10.76秒は私にとって永遠不滅の“アンタッチャブルレコード”だと思っていたが、オコエはそれを100分の1秒上回った。スカウトのストップウォッチも私と同じようなタイムを計測したようである。

【次ページ】 期待を超えるのがスターなら、オコエは既にスター。

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