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決勝で大儀見優季に漂う得点の予感。
オウンゴールを生んだ「必然」とは?

posted2015/07/04 10:50

 
決勝で大儀見優季に漂う得点の予感。オウンゴールを生んだ「必然」とは?<Number Web> photograph by AFLO

昨季の欧州王者ヴォルフスブルクでプレーする大儀見優季は、なでしこでも不動のエースだ。決勝で宿敵アメリカに勝つためには、彼女の活躍が絶対に欠かせない。

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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 なでしこが大会2連覇に王手をかけた。

 組み合わせに恵まれたこともあるがここまで6戦無敗、PK戦はおろか延長戦も経験していない。前回のドイツ大会では延長戦を何度も制してどうにか優勝したことを考えると、むしろ今大会のほうが順調にさえ見える。

 だが試合内容を見ると、苦しみながらここまで勝ち進んで来た印象のほうが強い。準決勝イングランド戦でも、相手ペースの時間帯は短くはなかった。セカンドボールを拾えず、相手のパワフルな突破やシュートを食い止めても、そのクリアをまた拾われ蹴られ、攻められる。クロスバーに助けられたことも1度ではなかった。

 佐々木則夫監督が試合後の記者会見で最後に投げかけられたのは「今日の戦いぶりには不安を覚えたのではないか?」という海外メディアからの質問だった。指揮官は「決勝に行こうという思いが強すぎてメンタルに響いた選手がいる」と、質問者の意図を外した回答で煙に巻いた。

2トップの守備は機能しているが、得点の自信は?

 華麗なボールさばき、見ていて楽しいサッカーと評されることもあるが、実はなでしこのサッカーはまず守備ありきだ。前線から追い込み、相手の攻撃の芽をつんでいく。決勝トーナメントの3試合すべてに先発している大儀見優季と大野忍の2トップが丁寧にその仕事をこなし、中盤と最終ラインが連動して最適な距離感で動く。

 イングランド戦ではその距離感が相手のロングボールによって狂わされたのが、ペースを握られた一因だ。とはいえ、2トップの守備がチームにリズムを生み出すサッカーであることにかわりはない。

 だが、そこにはもちろん弊害がある。本来、ストライカーの働きを期待されているはずの大儀見は、決勝トーナメントで無得点。イングランド戦後も「自分がシュートを決めるイメージはなかったんですけど、事故みたいな形で絶対何かくるなと思っていた」と明かした。自分の形での得点はイメージ出来なかったと言うわけだ。

 また、相棒である大野も今大会無得点。試合前は「決めるのは私ではないと思いますけど誰かが決めれば……」と話し、「お前が決めると思ったから(記者会見に)連れて来たのに」と佐々木監督に突っ込まれた。2トップが共に得点への自信を持ちきれていない印象は強い。流れの中からの早い時間帯の得点があれば試合運びがいくらか変わってくるはずだが、そのイメージは見ている方としても持ちにくい。

【次ページ】 大儀見「ポジションを上げられている手応えはある」

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