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南野拓実がオーストリアで二冠獲得!
「強者の戦い」を学び、視線は上へ。
posted2015/06/05 10:40
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
サッカーの世界では、ハーフタイムになれば両チームの選手は淡々とロッカールームへと引き上げていく。
それでも、南野拓実はしばらく1人でベンチにとどまっていた。前半終了のホイッスルから6分ほどがたって、ようやくロッカーへと向かった。この試合では、チームのためにピッチで結果を残すことは出来ない。あの6分間は、そんな悔しさをかみしめる時間だったのかもしれない。
オーストリアサッカー界のしめくくりは国内カップ戦、サムソンカップの決勝戦だった。今年1月にレッドブル・ザルツブルクに加入した南野拓実は、国内リーグで優勝を果たしてプロ入り初のタイトルを獲得したばかり。そして、2つ目のタイトルをチームにもたらすために、この試合で左MFとして先発した。
「監督からも別に変わった指示はなかったですし、いつも通り自分たちのサッカーをしようという感じでした」
GKが退場した影響で、南野はピッチを去った。
FKオーストリア・ウィーンを相手に、南野は縦に、ダイアゴナルにと足を止めずにパスを引き出そうと動き続けていた。相手を押しこむ時間は長かったが、FKオーストリアも守備に人数を割き、集中力を切らさずに守っていた。
そんな試合が大きく動いたのが41分、FKオーストリアのカウンター。デ・パウラがDFラインの裏に抜け出したのを見て、ザルツブルクのGKグラーチがエリアを飛び出して、ヘディングでクリアを狙うが、相手選手と交錯。決定機を阻止したということで、GKは退場を命じられてしまう。控えGKヴァルケと交代でピッチを去るように命じられたのが南野だった。
しかし、ハーフタイム後ずっと憮然としていたわけではない。
両チームにゴールが生まれないまま、後半終了のホイッスルが鳴った時のことだ。延長戦の前には選手たちはロッカーに戻らず、ピッチの上で休息の時間が与えられる。当然、45分以上の時間を1人少ない状態で戦っていたザルツブルクの選手たちの疲労はたまっていた。
延長戦が始まるまでのわずかな時間で、トレーナーたちは選手の身体のマッサージ、怪我のケアなどを行なうが、トレーナーの人数には限りがある。チームメイトの元にかけよった南野は、彼が上に挙げた足の裏を必死でおして、ストレッチを手伝っていた。トレーナーが他の選手への処置が終わり、その選手のもとにやってくるまで、それは続いた。南野は交代で下がった選手として、チームのために貢献できることに、当たり前のように取り組んでいた。