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永井謙佑、走るのは「きついっすよ」。
誰よりも速く、誰よりも長い距離を。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2015/05/22 10:30

永井謙佑、走るのは「きついっすよ」。誰よりも速く、誰よりも長い距離を。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

今季からJリーグで始まったデータトラッキングシステムでも、時速35km近くを何度も記録している永井謙佑。前にスペースがあるウイングバックへのコンバートは吉とでそうだ。

コンディションが戻らない中で、抱いていた確信。

 だが、苦境はここでピリオドを打たなかった。

 2013年8月にレンタル移籍で復帰を果たしながらも、チームにフィットしたとは言い難かった。コンディションのバロメーターである「走力」に、エンジンが掛かってこない。結局この年の永井は、ベルギーでも、Jリーグでもゴールを挙げることができなかった。

 大学でも五輪代表でもグランパスでもゴールを取ってきたストライカーにとって、ストレスばかりが募った。ロンドン五輪で脚光を浴びてから1年、ザックジャパン入りを期待する周囲の声も次第に消えていった。

 翌年も試行錯誤は続く。

 走れる体を再生すべく取り組むが、一度狂いの生じたコンディションは簡単には戻らない。シーズン当初から控え、時にはメンバー外の試合すらあった。

 だが、焦っているようには見えなかった。体のチューンアップさえ完了すれば、上向いていくという確信があったからに違いなかった。

「とにかく試合中によく動くことから始めたんです」

 事実、西野朗監督のもとで永井は夏場から調子を上げていく。その時期に名古屋のクラブハウスで永井に話を聞く機会があったが、ようやく掴んだ復調の手応えに、表情も明るかった。

「とにかく試合中によく動くことから始めたんです。運動量が増えてくれば、自分の場合、プレーにも余裕が生まれてくる。それが今やっと出てきたのかなって。

 向こう(ベルギー)ではコンディションが全然上がっていかなくて……。でもベルギーでの経験はとても大事な経験でした。そこからつぶれるのも、頑張るのも結局は自分次第だと思っていますから」

 苦しんで出した永井の結論は、とにかく走る、動くということ。それが自分のリズムを生み出し、パフォーマンス自体を引き上げていくのだ、と。

 エンジンが温まれば温まるほど、馬力が出てくる。迷いがなくなった永井は、2014年シーズンにキャリアハイの12得点を挙げ、天皇杯でもトップタイの6得点を叩き出した。

「練習でもチームメイトのフィジカルが凄く強かったので、その分自分も強くなっているのかなとは思う」と、約半年ながらベルギーで揉まれた成果も感じていた。

【次ページ】 速いだけでなく、躍動感と迫力がある永井の走り。

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永井謙佑

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