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守備意識、裏への抜け出し、日の丸。
宇佐美貴史が代表で手に入れたもの。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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posted2015/05/15 10:50

守備意識、裏への抜け出し、日の丸。宇佐美貴史が代表で手に入れたもの。<Number Web> photograph by AFLO

ハリルホジッチ監督に体脂肪率の高さを指摘された宇佐美だが、それも監督にかけられた期待の高さの表れだろう。

チームメイトへの要求にも表れた宇佐美の変化。

 宇佐美がゴールを奪うための意識の高さは、チームメイトへの要求にも表れている。今野泰幸は、これまで宇佐美から特に要求されたことはなかったが最近は、「裏に出して」と言われるようになったという。

「最初、そう言われた時は、『えっ裏なんだ』って驚いた。今まで言われたことなかったから。でも、それは貴史のもっと進化したい、うまくなりたいという意識の表れだと思うんで、大事なことだと思います」

 この「裏狙い」はまさに代表で得た刺激のたまものだ。代表には岡崎慎司という裏狙いのお手本がいる。彼の動きに影響を受けて、自らチャレンジを始めたのだ。

「本来の自分ではない姿を見ると、ガッカリするんです」

 代表の中には、メンバーに入っただけで満足してしまう選手もいる。宇佐美のように受けた刺激を課題として取り組み、実践し、明確に変わりつつある姿を披露できている選手は意外にも少ない。宇佐美が、その希有な選手でいられるのは“あること”ができるからだろう。

「自分を客観視するというか、もう一人の自分が今の自分を見れるようにしているんです。それを始めたのはガンバでプロになってから。試合に出れなくなって、いろんな人間関係がある中で、そういう見方を作っていこうと思っていて、それがドイツで確立された感じです。

 ホッフェンハイムの時、サッカーがつまらない、面白くないと感じてる自分がいた。本来の自分を知っている自分が根本にいるんで、理想を失っていたり、本来の自分ではない姿を見ると今の自分も本来の自分もガッカリするんです。逆にいい時は調子に乗るなよって本来の自分が言ってくれる。そうした見方をすることで自分を見失うことがなく、やっていけるんです」

 今は、もうひとりの自分がいろんな課題に取り組むべきだと叱咤しているのだろう。5月12、13日と行なわれた日本代表候補合宿では、扁桃腺の炎症でかすれ声になったものの元気にメニューをこなした。とりわけ、縦パスから展開してゴールを狙う練習ではシュートのコース取りやクロスの質の高さで違いを見せ、決定率も非常に高かった。

【次ページ】 「刺激をもらえることを言われました」

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