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権田修一と榎本達也が話し合うこと。
10歳差、2人のGKの不思議な関係性。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/07 11:00
FC東京では2009年のデビュー戦以来ゴールマウスを守り、ロンドン五輪にも出場、A代表にも名前を連ねる権田修一。言葉の明快さにも定評がある、考えるGKである。
試合後にしばしばもたれる“話し合いの場”。
FC東京が1-0で勝利を収めた4月29日のアルビレックス新潟戦(アウェー)が終わった後も、2人は“話し合いの場”を持っていた。
この試合、最大のピンチが後半35分にあった。ゴール前で山崎亮平にシュートを打たれ、森重真人がブロックしてこぼれたところを詰めていた小泉慶に至近距離からシュートを打たれた。最初のシュートに反応して倒れ込んでいた権田はすぐさま立ち上がり、小泉のシュートを正面で防いでいる。
「ディフェンスが体を張ってくれて、そのうちの1個、相手が抜けたところを自分が防ぐイメージなんで。もしセーブポイントがあるとすれば、味方のフィールドプレーヤーがだいぶ稼いでいくれているんだと思っています」
そう言ってディフェンスに感謝した後、榎本と何を話したかを権田は明かしてくれた。
「エノさんはまず“倒れた後の体を戻す動きが速かった”と言ってくれました。体を逆に持っていくのはやっぱり難しいので、そこを言われたのは嬉しかったですね」
榎本が単純に反応だけを見ていたわけではないことを、権田も分かっている。
「こだわりみたいなところで似ているところもある」
あのシーンから何を見たのか――。次に榎本に尋ねてみると、彼はうなずきながら語っていく。
「起き上がっただけじゃなくて、同時に次の動作を取ろうとしていたからね。股下のところも(シュートを)想定していたし、起き上がりながら相手がこうしてくるんじゃないかって予測をいくつか立てていたと思うから。いろんなプレーを見ても、ゴンちゃんはゲームのシチュエーションを考えたうえで予測しているのが見受けられる。予測できているから落ち着いて対処できているし、慌てなくて済む。
ゴンちゃんのプレーを見ていて思うのは、ポジショニングの良さ。ゴンちゃんも俺も、正面のボールを弾くよりもしっかりとキャッチしたいタイプだし、(キーパーの)こだわりみたいなところで似ているところもある。キャッチできればボールはフィフティフィフティにならず、自分たちのボールにできるわけだから。
いいポジショニングがあるから、いいキャッチングが出ている。その良さは、いろんなキーパーを見渡してみても際立っている部分だと俺は思うよ。練習でもどういうふうにキャッチングにいくか意識してやっているように見えるし、練習していることがそのまま試合に出ている感じがする」