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権田修一と榎本達也が話し合うこと。
10歳差、2人のGKの不思議な関係性。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/07 11:00
FC東京では2009年のデビュー戦以来ゴールマウスを守り、ロンドン五輪にも出場、A代表にも名前を連ねる権田修一。言葉の明快さにも定評がある、考えるGKである。
ライバルであり、仲間であり、後輩であり。
ピッチに立てるキーパーは一人しかいない。
昔までは「自分中心で物事を考えることが多かったし、特にマリノス時代は強がっていた」と笑って振り返る榎本だが、キャリアを重ねてきて周りのことを考えて行動することが自然と多くなっている。「第2キーパーでいいなんていう考えはない」と強い気持ちを持ちながらも、「試合に出るキーパーが気持ち良くプレーできる環境でありたい」と最年長らしい配慮も見え隠れする。
「キーパーにはキーパーしか分からないことが結構あるからね。若いキーパーを含めてみんなが楽しく切磋琢磨していけばいいと思うよ」
権田に対しても「俺は代表に行ったことないけど、経験してきたことで見えるもの、言えるものもあると思うから」と気づいたことがあれば遠慮なく言う姿勢を変えるつもりはない。
ライバルであり、仲間であり、年下の後輩であり、参考にしたいと思えるキーパーでもある。いろんな目で、角度で、これからも充実一途の権田を見つめていく。
見て見られて、お互い高めあう関係性。
この日、小平のグラウンドでは全体練習が終わっても、2人はそれぞれ別々に居残ってトレーニングに励んでいた。
そして、権田が語った最後の一言が、ちょっと胸に響いた。
「エノさんはもっともっとうまくなりたいって思って練習しているし、それは伝わってきます。僕のほうが全然年下なのに“こういうときって、どうしたらいいと思う?”って聞いてくれたりもする。ああいう先輩と一緒にサッカーをやれているのは、自分にとって素晴らしい経験になっている」
彼もまた、榎本達也というキーパーに熱い視線を送り続けている。
見て見られて、お互いを高め合う関係性。
年齢は離れていても、情熱は離れていない。熱視線の交差が、権田修一にさらなる成長を呼び込んでいるような気がしてならない。