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ホッコータルマエが“砂の王”に!
初開催のGIで問われた適応力。  

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2014/12/08 11:20

ホッコータルマエが“砂の王”に!初開催のGIで問われた適応力。 <Number Web> photograph by Yuji Takahashi

ジャパンCダートでは2年連続3着、今年2月のフェブラリーSでも2着とあと一歩のところで勝ち星を逃していたホッコ―タルマエだったが、念願の中央GI初制覇となった。

勝敗を分けたのはスローペースだったのか?

 もしコパノリッキーがもっとスムーズにゲートを出て先手をとっていたら、こんなにゆっくりした流れにはならず、上位の顔ぶれも変わっていただろう。

 2着のナムラビクターに騎乗した小牧は「完璧だった。勝ったと思った。誤算は、コパノリッキーが逃げず、スローになってしまったこと」と振り返った。3着ローマンレジェンドの岩田康誠も「まさかスローになるとは……」と唇をかんだ。追い込み馬のワンダーアキュートの武も「ここまでペースが遅くなると、この馬も伸びているが、前も止まらない」。ワイドバッハの蛯名も「ペースに恵まれなかった」と話している。

 ホッコータルマエだけが、このスローペースを味方につけた。が、いくつもの「タラレバ」を考えてみるとわかるのだが、どんな展開になったとしても勝ち負けしていた可能性がほかのどの馬より大きかったのは、この馬だった。流れがもっと遅くなったらハナに立っていたかもしれないし、ハイペースになったら好位で折り合っていただろう。

 勝敗を分けたのは、数々の経験に基づいた対応力、適応力だった。

 1着から3着までが、この中京ダート1800mで競馬をしたことのある馬だったことも、経験がモノをいうレースになったことを示している。

本番のコースを試走することの意味。

 本命馬のコパノリッキーは、今回が中京のコース初体験だった。また、新馬戦や霜月ステークスなどでも先行できずに大敗したことがあったが、田辺が乗るようになってからは、ここまで立ち遅れて競馬をしたのは初めてだった。そうした「初めてのこと」が本番で出てしまい、力を出し切れずに終わるケースが競馬では非常に多い。ただでさえ「初物尽くし」になりがちな新装GIで、これだけ初めてのことが重なったのは痛かった。

 前の馬がはね上げる砂を嫌がっていたように見えたアメリカのインペラティヴにも同じことが言える。日本馬が凱旋門賞に出るときも毎年言われることだが、特殊なコースは本番前に試走しておいたほうがいい。呼び方は同じ「ダート」でも、日本のそれは砂で、アメリカのそれは土に近い。本番で初めて砂をかぶるのではなく、トライアルで一度かぶっておけば、こうまで嫌がらなかっただろうし、デザーモにも手の施しようがあったかもしれない。

 せっかくまた左回りのコースで行われるようになったのだから、これに懲りず、アメリカの馬には参戦しつづけてほしいと思う。

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ホッコータルマエ
田辺裕信
コパノリッキー

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