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<独占公開、W杯の真実> 矢野大輔・ザックジャパン通訳日記 ~ギリシャ戦、そしてグループリーグ最終のコロンビア戦へ~ 

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矢野大輔

矢野大輔Daisuke Yano

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photograph byHirofumi Kamaya

posted2014/10/30 11:30

<独占公開、W杯の真実> 矢野大輔・ザックジャパン通訳日記 ~ギリシャ戦、そしてグループリーグ最終のコロンビア戦へ~<Number Web> photograph by Hirofumi Kamaya

試合直前、ロッカールームでの監督の言葉。

 試合直前、ロッカールームで監督はこう言って選手たちを送り出した。

「人生にはそんなに多くのチャンスは回ってこない。そのチャンスを実らせることが成功につながる。サッカーも同じ。巡ってきたチャンスを生かすも殺すも自分次第。必ず生かそう。サッカーの世界に“次こそ”はない。目の前のチャンスを手繰り寄せられるかだ。最後まで集中して、勇気を持って戦おう」

 19時キックオフ。前半38分、ギリシャの21番(カツォラニス)が2枚目のイエローで退場。日本は数的優位に立った。

 ハーフタイム、後半あたまから交代カードを切ることに。数的優位を生かし、よりボールを回したい思いから遠藤(保仁)を投入する。

「このチャンスを生かそう。しっかり決めるぞ!」

 監督の指示。

「相手は4-4-1でやってくる。サイドでの3対2、中央での3対2をバリエーション出して作っていこう。サイドチェンジを増やしてもいい。もっとボールを速く動かすこと。特にサイドには速く動かして、数的優位を作ること。ボランチももっと前に付ける意識を持つこと。ヨシト(大久保嘉人)、圭佑、サコを積極的に使うこと。ボールをいかに速く動かすかが重要だ。このチャンスを生かそう。しっかり決めるぞ!」

 後半、長友(佑都)と内田(篤人)にワイドに張ること、遠藤にはもっと速くボールを動かすことを要求する。ギリシャが完全に引いて日本がずっとボールを支配できていたので、マヤ(吉田麻也)を前線に上げ、ホタル(山口蛍)をセンターバックに。

 しかし、守りを固めたギリシャをこじ開けられず、0-0のまま試合終了。

 初戦と同様、静まり返るロッカールーム。ビッグチャンスをモノにできなかった悔しさが充満する。悔しい、悔しい、悔しい……。

「ボールを動かすこと」がポゼッションと言えるが、イタリア人の言うポゼッションは、ボールを動かして相手を上下左右に広げ、スペースを作ってゴールに向かうというもの。しかし、ギリシャに上手く対応されてしまった。

 まだ可能性は残っている。チーム全員がそう理解しながらも、目の前にあったチャンスが大きすぎて、失望の気持ちの方が大きい。

 監督が言った。

「11人対11人の時の方がまだ素早くボールを回せていた。我々が1人多い状況になって、ギリシャの目的が明確化してしまった」

 これが日本代表の本当の姿ではない。このまま終わるわけには、絶対にいかない。

【次ページ】 コロンビア戦へ、何かを変えなくてはならない。

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