野球善哉BACK NUMBER
ドラフト会議の“安全指向”に苦言。
スカウトの皆さん、出番です!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2014/10/23 08:00
2013年のドラフト会議では、松井裕樹、大瀬良大地、石川歩に第1回指名で競合が発生した。果たして今年は?
「即戦力」という幻想は選手の伸びしろを奪っていないか。
そもそも今季の「不作」という評価の理由は、昨今のドラフトが「即戦力」にとらわれすぎていることにあると思う。
個人的な意見だが、ドラフトというのは将来チームの屋台骨になっていく選手を選択していく会議であるわけだから、「即戦力」という考え方は、新人選手獲得の際に相応しいものではないと思う。若い選手こそ成長のための猶予(時間)を与え、長く活躍してもらう土台を作らなければいけない。
トレーニング方法の進歩によって、投手の球速が各段に伸びたり、変化球の切れが高校生であってもプロで通用するレベルになってきているのは事実である。しかし、身体作りという部分においては、18歳の選手たちにプロで長くやっていく土台があるわけもない。
実際問題として、過去のドラフトで「即戦力」と騒がれ前評判通り1年目から活躍した選手が、2年目以降も同じように活躍できているかというと、決してそうではない。
もちろん、2年目のジンクスなるものがプロ野球に存在するのも理解している。しかし「即戦力」という幻想が、将来性豊かな素材の伸びしろを奪っている可能性を、今のプロ野球は考えなければならないのではないだろうか。
ドラフトと育成は、セットである。
20歳前後の選手が先発ローテーション入りすると、「若い選手が出てきた」ように見えるが、よく考えてみると、毎年ドラフトがあるというのに、高校を卒業して数年の選手にローテーションの1番手や2番手を任せなければいけない状況になっているのは、育成がうまくいっていないということの証左だろう。かつて「即戦力」と言われて華々しくデビューを飾った選手たちは、一体どこへいったのだろう。
ドラフトと育成は、セットである。
社会人ならばともかく、高卒選手、そして大卒選手くらいまでは、育成に多少の時間がかかることを受け入れてもいいのではないだろうか。