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<独占公開、W杯の真実> 矢野大輔・ザックジャパン通訳日記 ~コートジボワール戦の敗戦を受けて~ 

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photograph byHirofumi Kamaya

posted2014/10/16 11:30

19冊にのぼる大学ノートに綴られた日本代表4年間の記録。
そこには今まで明かされることのなかったザッケローニ監督の
真意や選手との対話が克明に記されていた。貴重な資料の中から
ブラジルW杯に挑んだザックジャパン激闘の日々を公開する。

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本日発売のNumber863号「レジェンドが語る愛と憎しみのクラシコ」では、
矢野大輔通訳による「ザックジャパン通訳日記」第4回が掲載されています。
今回は、逆転負けを喫したコートジボワール戦を受け、必勝を期して臨んだ
第2戦、ギリシャ戦までの模様が明らかになります。

NumberWebでは862号で掲載したブラジルW杯初戦当日の緊迫感と
翌日のチームの雰囲気を特別に公開します!

<2014年6月14日(土)>

 ついに訪れたコートジボワールとのW杯初戦。監督の意向で、この日は選手たちにストレスをかけたくないとのこと。19時25分の全体MTG(ミーティング)まで何もせず。そして全体MTG。

「今日は全員に最大のインテンシティ、最大のクオリティ、最大の集中力を求める。コートジボワール戦のポイントを説明する。

 まず攻撃に関して。相手は4DF+2MFのブロックで守る。前の4人は守備に参加しない。ウィークポイントはDFライン、そこにどんどん仕掛けていく。相手はアグレッシブとフィジカルを前面に押し出してくる。それに対して我々は相手の土俵に上らない。パス&ムーブとダイナミズムでかわす。相手DFラインはボールウォッチャーになりがち。だからプルアウェーの動きが効く。注意力も散漫だ。守備から攻撃に切り替わる際、DFラインが押し上げないから、バイタルエリアが空いている。そこを意識しよう。バイタルが空いてなければ、サイドに起点を作る。そうすると相手のダブルボランチがボールサイドに引っ張られて中が空く。

「毎試合、決勝のつもりで戦おう」

 そして守備について。センターフォワードの11番(ドログバ)にボールが入ったら、ボランチが挟みに行くこと。攻撃参加してくる右SBの17番(オーリエ)には香川(真司)がマークに付く。中に入ってくる右サイドの8番(カルー)は、長友(佑都)、長谷部(誠)、マヤ(吉田麻也)のいずれかがケアする。ボランチの9番(ティオテ)はフリーにさせない。そこから10番(ジェルビーニョ)へのサイドチェンジを狙ってきて、空いたスペースで一対一を仕掛けてくる。もしサイドチェンジされても、一対一に飛び込まない。遅らせることを第一に、岡崎(慎司)がサンドしに行くこと。岡崎が行けない場合は山口(蛍)がサンドする。10番は中に入って11番とのワンツーもある。最終的には11番の決定力を十分に警戒しなければならない。

 世論的には、日本は楽しくて美しいチームとしながら、未熟と見る向きもあるようだ。私はそんな世論なんかよりも君たちのことをよく知っている。君たちはすごい能力を備えていて、楽しくて、美しくて、成熟したチームだ。W杯で勝ち進む力を持ったチームである。だからこそ全員で戦って、可能な限り前へ進もう。全員でやらなければだめだ。毎試合、決勝のつもりで戦おう」

 MTGルームの空気は張り詰めていた。どんな小さな音も受け付けない雰囲気さえ漂っていた。おそらくこの4年間で一番の緊張感だったと思う。全員が極限の集中状態にあった。スタジアムに向かうバスの中も一緒。誰も一言もしゃべらない。

 ゲーム前のロッカールーム。10番のいるサイドからビルドアップさせること、そこからプレスが掛かっているか否かの見極めをチーム全体ですること、動きを統一することを指示する。

 円陣を組む。(本田)圭佑が「のまれるな! のんでやろう!」とハッパをかけ、キャプテンの長谷部が仕上げに「行くぞ!」の掛け声。チームは一つになっていた。

【次ページ】 本田の先制弾でチームのムードは最高潮だったが……。

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