日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
1本の縦パスが見せた日本の底力。
青山から大久保、控え組の“役割”。
posted2014/06/11 10:40
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
追いつかれてドローで終わるのか。それとも、振り切って勝つのか。
最後のテストマッチとなった米国タンパでのザンビア戦。ザックジャパンは、「希望なき前者」ではなく、「希望たぎる後者」の戦いを見せた。
1本のロングパスが、このチームの確かな底力を示してくれた。
3-3に追いつかれての後半アディショナルタイム。失点直後に登場した6人目の交代選手、青山敏弘は、試合再開と同時に受けたキックオフのボールを、迷うことなく縦に送った。約50m先には、斜め裏に走りこんでくる大久保嘉人。相手と競り合いながら右足で絶妙なトラップを見せ、振り向きざまに放った左足のシュートがザンビアのゴールネットを揺らした。
大久保は言った。
「出してくれるかなと思ったら、よう出したな、と。最後の最後でアオ(青山)からすごいボールがきた」
青山は「もちろん」とおおきくうなずいた。
決めたほうも決めたほうなら、パスを出したほうも出したほうだ。
試合後のミックスゾーン(取材エリア)で足を止めた青山は、「狙っていたか?」の筆者の問いに「もちろん」と大きくうなずいた。
「自分がボールを持ったときは、ダイレクトにゴールに向かっていけばいいと(チームに)理解してもらっていたし、実際、それが結果になった。裏に走ってもらわないと、自分の良さも活きてこない。やっとそれがマッチして自分の良さを出せたことは良かった。
あのパスしかない状況で、求められることをやるというのはなかなか難しい。でもそれをできたというのは、やるべきことをやった結果だと思っています」
青山に笑顔があったわけではない。本番はあくまで14日のW杯初戦、コートジボワール戦であり、今はその過程に過ぎない。とはいえ、本番に合わせてチームとの感覚がフィットしはじめている実感を得たこと、結果に出せたことが、彼にとっては何より大きかったのかもしれない。