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“プロ注”は少ないが熱戦多し。
選抜で気を吐く古豪・強豪校。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/03/27 11:30

“プロ注”は少ないが熱戦多し。選抜で気を吐く古豪・強豪校。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

3月24日、選抜第4日・1回戦の智弁和歌山対明徳義塾戦は、延長15回裏に暴投サヨナラという劇的な幕切れ。勝ち上がった明徳義塾は、29日に関東第一と2回戦を戦う予定だ。

高嶋仁、馬淵史郎の名将対決は手に汗握る展開に。

 明徳義塾に敗れた智弁和歌山も春夏通算3回優勝している強豪校として全国的な知名度を得ている。このチームの指揮を執る高嶋仁監督は春夏の甲子園大会で史上1位の63勝をあげている名監督。

 これに対して明徳義塾の馬淵史郎監督も、42勝23敗(大会前)で史上5位に君臨する名監督。「力対力」というより、「名将対知将」の腹の探り合い、選手の操縦法に興味が集まり、その期待に違わぬ名勝負を延長15回にわたって繰り広げた。

 智弁和歌山の先発は主戦の東妻勇輔(3年・投手)でなく、3番手と言っていい左腕の技巧派、齋藤祐太(2年・投手)。この齋藤が1回、先頭打者に投げているとき主審に何やら注意を受けていた。それも2回も。二段モーションの注意だと思われるが、試合が始まって投球フォームを修正しなければならないというのは投手にとって大きなハンディキャップである。私は早い降板を予測したが、その立ち上がり明徳義塾打者は齋藤の術中にはまりショートフライを2つ続け、3番打者もレフトフライを打ち上げて、齋藤を助けてしまった。

明徳の岸は徹底した内角攻めを敢行。

 対する明徳義塾の先発・岸潤一郎(3年・投手)は大会屈指の好投手と評されるだけあって、安定感十分の投球を披露した。「安定感十分」と書くと、のらりくらりした投球を想像されると思うが、報徳学園の中村のところで書いた内角攻めを、中村以上に徹底して敢行した。

 ストレートの速さは最速143kmで、その多くは130km台後半だから速球派ではない。しかし、内角攻めが徹底して、とくに強打が評判の3番山本龍河(2年・外野手)には執拗にストレート、変化球でえぐり続けた。私は1回戦が終わった時点で今大会目立った選手を一覧表と文章で日刊スポーツに掲載することになっているが、翻弄される山本の姿を見て、注目選手として一覧表に掲載するのをやめようとした。それほど岸は山本を圧倒した。

 試合は2回表、智弁和歌山が岸の暴投で1点を先制すると、明徳義塾が5回裏、山本のフライを落球するエラーをきっかけに1点取って同点。試合はその後こう着状態に入り、延長戦に突入する。12回表、汚名返上に燃える山本が1ボールから岸の甘い高めストレートを捉えてライトスタンドに放り込むと、その裏に明徳義塾はスクイズで同点に追いつくというシーソーゲーム。

 15回表、智弁和歌山は1死後、相手遊撃手のエラーをきっかけに四球と安打で2死満塁のチャンスを作るが8番打者内野ゴロに倒れ、私は同点再試合を覚悟した。しかし、明徳義塾はしぶとい。1死後、中前打→四球→中前打で満塁のチャンスを作り、7番森奨真(3年・内野手)のところで智弁和歌山の2番手・東妻の暴投で三塁走者がホームインをするというまさかの幕切れ。プレーしている選手や指揮を執る監督は疲れたと思うが、観ている私たちも疲れた。くたくたになって熱戦の余韻に酔いしれた、そういう疲れである。

【次ページ】 点差よりも、内容は僅差だった龍谷大平安対大島。

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高嶋仁
馬淵史郎
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池田高校
智弁学園高校

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