欧州サムライ戦記BACK NUMBER
代表でも、クラブでも輝くために。
清武弘嗣が放った“復活”のミドル。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byBongarts/Getty Images
posted2014/02/27 16:30
フェルベーク監督は清武のPK失敗についても、「彼はこれまでもチームで一番のキッカーだったし、ミスは誰にでもあるものだ」と信頼厚いコメントをしている。
吹っ切れた清武に以前の輝きが戻ってきた。
自分自身の気持の整理がつくと清武のプレーは、見違えるように変わった。前半戦とは異なり、躍動感が溢れ、運動量豊富ないつものプレーが戻ってきた。とりわけ目立ったのは、さばくだけではなく、ゴールに直結する動きの質が高まったことだ。スペースを作る動き、裏への動き出しを始め、シュートを積極的に狙うようになり、相手が彼を捕まえるのに苦労していた。チームも後半戦4勝1敗と好調を維持している。
「後半戦、ホッフェンハイム戦から始まって、ブラウンシュバイク戦が一番動きが良かった。自分でもよく動けているなって思います。それは気持ちが前向きになったからでもあるけど、自分なりのトップ下のイメージが出来たからかなと思います」
「オレは動かないと自分の良さが出ない」
「昨年、トップ下の動きを圭佑(本田)クンに聞いた時、動きすぎると疲れてフィニッシュの精度を欠いたり、ボールロスをしてしまうんで、ここだと思う時以外動かないことも重要だと言われた。最初はそうだなって思っていたけど、よく考えるとオレと圭佑クン、タイプが違うじゃないですか。オレはフィジカルが強くないし、動かないと自分の良さが出ない。そのことが分かったんで、サイドに流れたり、真ん中行ったり、動きながらチャンスを作るようにしている。これを続けていけば、自分もチームももっと上にいけると思う」
ミックスゾーンでの表情は、いつになく晴れやかだった。ドイツ人記者からの質問も通訳を介して10分近く対応していた。
ひとつ山を超えた感があった。
昨年は、余裕もなく、不安気にどこか遠くからチームを見ていた雰囲気があった。だが、今は自分がチームを引っ張り、ここで輝くのだという覚悟が感じられる。叩き込んだミドルシュートは、迷いや焦りから脱した“清武復活”の狼煙になった。