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「遠回りしたっていいと思ってる」
J2の1年は遠藤保仁の何を変えたか。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2013/12/16 10:30
「J2 Most Exiciting Player」を受賞する遠藤保仁。プロ入り初の主将、宇佐美をサポートする高めのポジションなど、初体験に満ちた1年となった。
いつもの指定席に、いつもの人がいなかった。
Jリーグ年間表彰の舞台となる2013年の「Jリーグアウォーズ」。2003年から10年連続でJ1ベストイレブンに選ばれていた遠藤保仁は、壇上に並んだ11人の選手たちを外から見つめていた。
セレモニー後、そのときの気持ちをちょっと聞いてみた。フッと軽い笑みを浮かべたのちに、実に彼らしい答えが返ってきた。
「久しぶりにベストイレブンのメンツを外から見ましたけど、日本人全員というのは久しぶりだし、それは凄くうれしかったですよ。それに、あそこにまた立ちたいなって思いましたね」
いつも自然体で、すべての事象を後ろ向きに捉えることなく、自分の成長につなげようとする。来年1月に34歳を迎えるベテランの変わらぬ姿勢を反映するような、フワリとした空気感のなかにも芯を感じさせる反応であった。
プロ16年目、キャリアで初めてJ2の舞台を経験した。
遠藤の2013年シーズン。
プロ16年目、A代表歴代トップのキャップ数を誇る男は、キャリアで初めてJ2の舞台を経験した。
シーズンが始まる前は、いろいろと懸念されたものだ。
ザックジャパンの多くのメンバーが欧州で揉まれていて、国内組に目を移せば若い選手たちがJ1で力をつけようとしている。それに対して逆にレベルの下がるJ2でプレーすることが、遠藤のパフォーマンス自体に影響を及ぼすんじゃないか。レベルの維持、向上が難しくなるんじゃないか――。そのうえ、環境面でJ1のように整備されていないところもあり、ベテランには負担がのし掛かってくるかもしれない。かく言う筆者も、レベルアップという観点に立つと厳しい見方をしていた一人であった。
だが、それは杞憂に終わったと言っていい。
今季のガンバ大阪は序盤こそ守備を重視してくるチームを相手にもたついたものの、GWから夏場にかけて順調に勝ち点を伸ばし、最終的には優勝を遂げた。総得点99は断トツで、得点数2位のヴィッセル神戸に21点差もつけている。若手が台頭してきたパワフルな攻撃サッカーの中心にいたのが、言うまでもなく遠藤である。