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プレーオフ届かずも、包まれた拍手。
松本山雅が熱烈に愛される理由。 

text by

飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2013/11/28 10:30

プレーオフ届かずも、包まれた拍手。松本山雅が熱烈に愛される理由。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

1万6885人が詰め掛けたアルウィンのファンに拍手で送られる松本山雅イレブン。

正直に言うと、プレーオフには懐疑的だった。

 今やJ1と比べても引けをとらない数のお客さんたちも、選手がファウルで相手の突破を阻んだり、レフェリーに文句を言ったりする姿を見に来ているわけではないだろう。何より、簡単にファウルしていては、選手自身の成長にもつながらない。

「フェアプレー賞を頂きました!」と反町監督は叫んだ。

 もちろん、この賞は12月のJリーグアウォーズで受賞チームが発表されるもので、完全な勇み足。だが、よほど嬉しかったに違いない。

 スピーディで、リスキーで、ハードワークで、なおかつクリーン――。

 こうしたスタイルも老若男女の市民に熱烈に支持されている理由に違いない。

 正直に言うと、個人的には昨季から導入されたJ1昇格プレーオフに懐疑的だった。

 たしかに6位の大分トリニータが上位陣をバタバタとなぎ倒し、3枚目の切符を掴んだ昨季のプレーオフは、エンターテインメント性に富んでいて、大分が寸前まで解散の危機に追い込まれていたこともあって、ドラマ性にも満ちていた。

 だが、それでも1年に及ぶリーグ戦の結果が、最後の“イベント”によって覆ることに100パーセント納得できたわけでなく、プレーオフを勝ち抜いたチームがJ2の1位、2位より目立つことにも違和感を覚えていた。

プレーオフがあるからこそ、消化試合にはならなかった。

 だが、この熱戦を目の当たりにし、JFLのクラブから加入してきた塩沢勝吾のこんな言葉を聞いた今は、違う。

「最終節までこんな痺れる試合が経験できて、ホントに幸せです。とても楽しかった。この経験はクラブにとっても、僕ら選手たちにとっても、間違いなく財産になると思います。J1でプレーしたいという思いがますます強くなりました」

 プレーオフがあるからこそ8位と17位の対戦は消化試合にならなかった。プレーオフがなければ感じ得なかったプレッシャーを、4位から8位にいた5チームは体験できた。

 ホームで痛恨のドローを演じた札幌にとっても、この大一番を経験したのと、していないのとでは、今後の成長の度合いが違ってくるだろう。

【次ページ】 区切りの3年目、反町監督がリベンジに挑む。

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