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オルフェとキズナ、史上最強の日本勢。
凱旋門賞、陣営が見せる自信の根拠。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byPanoramiC/AFLO

posted2013/10/04 10:30

オルフェとキズナ、史上最強の日本勢。凱旋門賞、陣営が見せる自信の根拠。<Number Web> photograph by PanoramiC/AFLO

オルフェーヴルは前哨戦のフォア賞で他馬を一瞬で突き放し、騎乗のスミヨンが後ろを振り返るほどの余裕だった。

キズナがフランスで見せた予想以上の適応力。

 もともと根付きがよくてパワーを要するうえに、湿ってさらに重くなった芝。2400mでも一周しない特殊なコース形態。道中の大きな起伏。他馬と接触することもしばしばの密集した馬群。止まってしまうのではと思うほどのスローペース……といった、日本とはまるで異なる条件のもと、武はあえてダービーを制したときと同じような走りをさせて、脚を計ったのだろう。言ってみれば、課題を浮き彫りにするための「試走」だったのだが、キズナは思っていた以上の適応力を見せ、勝ってしまった。

 日本のダービー馬が斤量面で有利(3歳56kg、古馬59.5kg。牝馬1.5kg減)な3歳のうちに凱旋門賞に出走するのはキズナが初めてとなる。いやがうえにも期待が高まる。

 本番に向けての最終追い切りは、2日、帯同馬のステラウインド(牡4歳、父ゼンノロブロイ、美浦・尾関知人厩舎)との併せ馬で行われた。キズナは、6ハロンの追い切りで、ステラを2馬身ほど前に見ながら追走し、ラスト1ハロンで並びかけるや、あっと言う間に3馬身ほど突き放した。首を大きく使うフォームは、ダービーを勝ったとき以上にダイナミックで、美しくもあった。

「思っていたより馬がリラックスしていました。そのぶん、ラストは鞭を入れてしっかり走らせました。前走の追い切りより動きはよかった。1度使って、状態は確実にアップしています」

 そう話す武の表情は、笑みの絶えなかった前日とは明らかに違っており、静かな緊張感が伝わってきた。

「ディープの子供で凱旋門賞を勝ちたい」

 武にとって、1994年にホワイトマズルで初めて出場して6着に敗れて以来、今年が6度目の凱旋門賞参戦となる。

 '06年にはキズナの父、ディープインパクトで臨み、3位入線後失格。

 ――ディープは世界一強い。この馬なら凱旋門賞を勝てる。

 そう信じていただけに、勝てなかったというより「獲りこぼした」という感覚でいるようだ。

 7年後の今、その産駒で再度頂点を狙いにきた。

「ディープが引退してから、いつか彼の子供で凱旋門賞を勝ちたいと思っていたので、このチャンスをモノにしたいという気持ちが強いですね」

 イギリス人記者に、「ライバルだと思う馬は?」と訊かれた時には「オルフェーヴル」と即答した。

「世界最強と言えるメンバーが揃うでしょうが、とにかく、キズナのよさを引き出すレースをしたい。悔いのないようベストを尽くし、勝ちに行きます。頑張ります」

【次ページ】 日本勢のワンツーフィニッシュも期待できる根拠。

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