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経営危機を越えブンデス史上最強に!
ドルトムントの“黄金の成功術”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/12/05 08:01
2008年の就任後、チームを着実にステップアップさせてきたクロップ監督
23.9歳とリーグで最も若いチームの平均年齢。
ボルシアMG戦のスタメンに目をやると、クロップが来てからチームに加わった選手や下部組織から昇格した選手が7人を占めている。クロップの指導力もさることながら、その間に適切な補強を行なった成果が表れている。
1998年にドルトムントでユニフォームを脱ぐと同時に、スポーツ・ディレクターに就任したツォルクは「クロップの獲得こそが、私のした最高の仕事だ」と語る。
チャンピオンズリーグ出場を見越した過剰な投資で、6年前にはクラブの経営危機を招いたため、「ツォルクこそが大いなる失敗だ」と批判された苦い経験もある。彼が試行錯誤のもと、出会ったのが2008年にマインツの監督の座を離れたクロップだった。
資金のない弱小クラブで知恵をしぼったクロップ監督とツォルクSDの二人三脚が2008年に始まり、その成果が実を結び始めている。クロップ就任後の変化をツォルクSDが解説する。
「(クロップ就任の前と後では)非常に大きな違いがある。(かつては)優秀ではない選手が、高額の移籍金でチームにやってきたからね」
現在では、30歳以上の選手は獲得せず、「若くて、ハングリーで、チームと共に成長できる選手」を獲得するよう務めている。チームの平均年齢は23.9歳でリーグで最も若い。先日は、80万ユーロを支払って1860ミュンヘンからU-19ドイツ代表の逸材ライトナーを獲得するなど、将来を見据えた投資にも抜かりがない。
ツォルクSDが理想とするのは、やはり、あのクラブだ。
ポーランドと日本での親善試合を計画する理由とは?
「我々が、尊敬して止まないのはFCバルセロナだよ。彼らは芸術的なサッカーを見せ、シャビ、イニエスタ、メッシのような(下部組織出身の)選手たちがその中心にいるのだから」
クロップとの契約延長が決まると、ラウバル会長は饒舌に語って見せた。
「昔ながらの基準のもとで経営していたら、例えば、香川のような選手がやってくることもなかったかもしれない。彼と共に戦うという我々は他のクラブを勇気づけることになるだろう。他のやり方では成功を得られないだろうね」
現在、ドルトムントはシーズン終了直後にポーランドと日本で親善試合を行うことを計画している。チームにはポーランド代表の3選手が名を連ね、日本代表の香川が大活躍しているため、両国はドルトムントの重要なマーケットになるからだ。
この話が実現するとき、ピッチ上の戦いだけではなく、ピッチ外での戦いでも日本には学ぶことがあるのかもしれない。数年前までは経営危機が叫ばれていたドルトムントが、お金がなくて知恵をしぼったクラブが、成功を収めつつあるのだから。