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岩渕真奈が世界で手にした
価値ある経験。
~U-20サッカー女子ワールドカップ~ 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

PROFILE

photograph byNoriko Hayakusa

posted2010/08/22 08:00

C組第2戦。後半17分に岩渕のゴールで1点を返したが、ナイジェリアに1-2で敗れた

C組第2戦。後半17分に岩渕のゴールで1点を返したが、ナイジェリアに1-2で敗れた

 U-20女子ワールドカップは地元ドイツの優勝で幕を閉じたが、決勝戦を前に発表された、大会MVP候補10名を見て驚いた。日本はグループリーグ敗退に終わっていたにもかかわらず、そこに岩渕真奈の名前があったからだ。

 実際に現地で大会を取材してみると、岩渕がちょっとした“顔”であることに気づく。2年前のU-17女子ワールドカップでMVPに選ばれている岩渕は、相手チームの選手からも記念撮影を頼まれるなど、人気は絶大だった。チームの成績を度外視してMVP候補に選出されるあたり、女子サッカー界では特別な選手になりつつあるのかもしれない。

岩渕を襲ったナイジェリアの深く鋭いスライディング。

 ただし、この大会での岩渕のプレーが、本当にMVP候補にふさわしいものだったのかどうかは疑問だ。事実、彼女は非常に苦しんでいた。

 印象的だったのは、ナイジェリア戦での65分のシーンである。

 右サイドで縦パスを受けた岩渕はここが勝負とばかり、自らドリブルで仕掛けた。待ち構えていたのは、再三、岩渕とマッチアップしていたオハドゥガ。岩渕は正面から左へボールを持ち出し、果敢にオハドゥガを抜きにかかったが、直後、深く鋭いスライディングタックルが岩渕からきれいにボールを奪っていた。

 岩渕は、女子代表デビューを果たした今年2月の東アジア女子サッカー選手権でも、相手DFのリーチの長さに戸惑っていた。だが、それとは違う。辛うじてボールを引っかけられたわけではなく、完璧に奪い取られたのである。

選手を成長させる「世界を肌で感じる」という経験。

「4番の選手(オハドゥガ)は、ナイジェリアのなかでも特別に足が伸びてくる。勉強になったというか……」

 試合後、岩渕はそう話してくれたが、恐らく本心は、勉強などという言葉で片づけられるものではなかっただろう。ボールを失った瞬間、岩渕は天を仰ぎ、この日一番の悔しげな様子を見せた。

 だが、世界を肌で感じることの重要性に、男子も女子もない。

 これほどの貴重な経験はそうそうできるものではなく、受けた衝撃の分だけ、選手はまた成長できる。

 言うまでもなく、岩渕のU-17に続く、MVP二冠はならなかった。それでも、この大会で彼女が手にしたものは、MVPに劣らない価値があったに違いない。

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