「20年に1人の逸材」のはずが……。
西武・雄星、1年目の挫折の意味。

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text by Kei Nakamura

photograph by KYODO

「20年に1人の逸材」のはずが……。西武・雄星、1年目の挫折の意味。

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チーム・選手名
埼玉西武ライオンズ
雄星

 西武のゴールデンルーキー、雄星は1年目から活躍できるのか、できないのか。その結論がひとまず出たようだ。

 先日、雄星は「左肩腱板の炎症」を理由に7月22日のフレッシュオールスターを辞退した。5月4日以降、実戦から遠ざかっているということもあり、残りのシーズンで故障を完治させ、そこから再度調整し、ファームで実戦経験を積み、一軍でデビューするというのは相当難しいように思われる。ましてや、「黄金級」の評価にふさわしい投球内容を披露するというのは。

楽天・田中ら高卒ルーキーの活躍がある空気を生んだ。

 きっかけは'07年、楽天の田中将大が高卒1年目で11勝を挙げたことだった。翌年は千葉ロッテの唐川侑己が同じように高卒ルーキーとして5勝し、シーズン終盤で一軍昇格を果たした同級生のヤクルトの由規も2勝を挙げた。

 高卒1年目でも、ドラフト1位クラスの選手なら即戦力になるのではないか――。

 清原和博や松坂大輔クラスの怪物はいざ知らず、数年前までなら、高卒ルーキーはまずは体づくりからという雰囲気が当たり前だった。ところがそれらの事例によって、新たな空気が生まれた。当の選手たちも、ソノ気になっていたに違いない。

 ましてや高校時代、「20年に1人の逸材」、「世界の宝」とまで言われた雄星は、ドラフト開始以来、もっとも評価の高かった高校生左腕と言ってもいい。周囲の期待だけでなく、自分で自分にかける期待も小さくなかったことだろう。

 今年1月、雄星は1年目の抱負についてこんな風に語っていたものだ。

「最高の目標は2ケタ(勝利)。中間は、開幕一軍で5勝。最低は1勝です」

 そんな発言を聞いても、こちらも思い上がっているなどとは少しも思わなかった。むしろ、これだけ注目されているルーキーなのだから、それぐらいのラインが妥当なのではないかとさえ思っていた。

高校時代MAX154キロを誇った直球が140キロ前後に。

 だが実際には、通用するしない以前の問題だった。高校時代と同じストレートさえ投げられなくなってしまったのだ。

 プロに入ってからというもの、雄星の真っ直ぐは出ても140キロ台止まり。ひどいときは140キロにも届かず、高校時代、MAX154キロを誇った真っ直ぐは見る影もなくなってしまった。

 高校3年夏、肋骨を疲労骨折した影響で、その後、十分な練習ができずに体のバランスを崩し、結果的にフォームを見失ってしまったという。

 だが、それだけではないだろう。昨年9月の新潟国体の初戦、故障が癒えた雄星は、夏の甲子園以来およそ1カ月振りにマウンドにのぼった。9回1イニングのみの登板ということもあって、そのときの真っ直ぐはやはりすごかった。

 夏の甲子園で全国制覇を果たした中京大中京の4、5、6番打者に対し、決め球はすべて真っ直ぐ。150キロ台を連発し、3者連続空振り三振に仕留めた。

 少なくとも、故障がほぼ治った段階であれだけのボールが投げられていたのだから、不調の原因は疲労骨折の影響だけではあるまい。

 ひとまず、あの真っ直ぐが、プロ野球の一軍打者にどこまで通用するかを見てみたかった。

<次ページへ続く>

【次ページ】「今のままでも即、通用する」という言葉の落とし穴。

(更新日:2010年7月12日)

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筆者プロフィール

中村計

中村計

1973年千葉県出身。ノンフィクションライター。某スポーツ紙を経て独立。『Number』(文藝春秋)、『スポルティーバ』(集英社)などで執筆。『甲子園が割れた日 松井秀喜の5連続敬遠の真実』(新潮社)で第18回(2007年度)ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。他に『佐賀北の夏』(ヴィレッジブックス)、共著に『早実vs.駒大苫小牧』(朝日新書)などがある。『雪合戦マガジン』の編集長も務める。趣味は、落語鑑賞と、バイクと、競艇。


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