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二軍でも勝てない斎藤佑樹に対して、
鎌ケ谷のファンが語る“複雑な感情”。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/08/21 10:31

二軍でも勝てない斎藤佑樹に対して、鎌ケ谷のファンが語る“複雑な感情”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

二軍の五十嵐信一監督は「個人的には追試という感じ」と斎藤がまだ昇格には早いことをコメント。次回の登板は25~26日のヤクルト2連戦(鎌ケ谷)が予定されている。

「相手は佑ちゃんだぞ、打ったら怒られるぞー」

 昨年の入寮時には町を挙げての佑ちゃんフィーバーで160億円の経済効果を挙げたとされる鎌ケ谷。6月4日に行われた二軍調整中の登板試合でも3000人が駆けつける盛り上がりを見せたが、この日のスタンドの観衆は900人。先発に斎藤がコールされても大きな歓声は起こらず、もちろん声援はあるのだが、それらに混じって「相手は佑ちゃんだぞ、打ったら怒られるぞー」、「(ドームと違って)冷房がないから大変だなー」なんて野次がちょこちょこ挟まれてくる。

 そりゃまぁ観客のヤジがよく通る二軍戦ということもあるのだが、つい15日前にはオールスター第一戦の先発マウンドなんて華々しい舞台で投げていたわけだ。「英雄と富士山は遠くで見るもの」なんて言葉が言い得て妙と膝を打つぐらい、二軍の斎藤佑樹はごくごく普通の投手に見えた。

 それでも4回までは完璧に相手打線を抑えていた。しかし課題としていたクイックモーションに代えた6回に、5本の長短打と四球・暴投で5失点となると、スタンドのおばちゃんからも「やっぱりダメね」の諦め声。さらに降板後の9回にファイターズが4点を返した時には「これ以上点を取ったら斎藤の負けが消えるだろ、この辺でやめとけー」なんて声まで聞こえてくる始末。

 正直、ちょっとショックだった。

“贔屓じゃないか?”というファンの疑念を払しょくする良い機会。

 この野次に対して、観戦に来ていた日本ハムファンに話を聞いてみた。

「嫌いなわけじゃないし、早く一軍で活躍して欲しいですよ。でも斎藤はずっと特別扱いみたいな感じで優遇されてきたわけですから、ヤジりたくなる気持ちもわかりますよ。ここ(鎌ケ谷)のファンは田中賢介や小谷野や糸井がそうだったように、一軍を目指して、泥にまみれて努力している選手を応援している人が多いですからね。斎藤佑樹はそれが見えないでしょ。去年もすぐに一軍に行っちゃったし、ちょっと結果を出せばすぐに札幌に行けるわけだから意地悪なことも言いたくなるでしょう」(T.Tさん)

「僕もアンチエリートですから、試合開始当初は『斎藤どうなのよ?』と懐疑的な目で見ていましたけど、こんな感じにヤジられているのを見るとちょっと可哀想ですね。でもちょうどいい機会じゃないですか。開幕投手もそうですけど、これまではどこかで“贔屓されているんじゃないか”という感情があった。いろいろ背負わされて大変だとは思いますよ。オールスターでファン投票1位になって、ベンチで話す相手がいない姿を見ていると、なんだかマジメな子が無理やり学級委員を押し付けられたような痛々しさがありましたからね。だから1年でも2年でも鎌ケ谷で一生懸命練習して貰って、こっちのファンにも認められる選手になってほしい。泥だらけのハンカチが見たいですよ」(東京都 ハム岡さん)

「“あの実力ではプロだと厳しいだろう”とか、評論家もファンも言ってますけど、6年前の甲子園で優勝した時の斎藤佑樹を思えばこれで終わるわけがない。大学・プロ入り後の斎藤は報道の仕方もあるんだろうけど、出る言葉出る言葉がスマートすぎるでしょ。でもあの夏の斎藤佑樹の投げている姿って無茶苦茶強気で熱かった。『背負っています』とか言葉でいろいろいうよりも、気魄の塊だったあの夏の姿をもう一度見たいんだけどねぇ。無理だとは思わないんだけどねぇ」(千葉市 カマガヤンさん)

【次ページ】 栗山監督は……「結果を残さない以上昇格はない」。

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