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元巨人球団代表が描いた、
プロ野球の大動乱時代。
~著者が語る『プロ野球復興史』~ 

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posted2012/07/03 06:00

元巨人球団代表が描いた、プロ野球の大動乱時代。~著者が語る『プロ野球復興史』~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『プロ野球復興史 マッカーサーから長嶋4三振まで』 山室寛之著 中公新書 800円+税

 巨人軍の元球団代表が本を出した。ただし、書き手は「あの人」ではないし、「告発本」や「暴露本」でもない。

『プロ野球復興史――マッカーサーから長嶋4三振まで』。著者は山室寛之氏。1964年、読売新聞社に入社。社会部長、西部本社編集局長などを歴任し、'98年から2001年まで巨人軍球団代表として長嶋政権を支えた。

 本書は、同氏が社長・会長を務めた読売ゴルフを退社した後の'10年に上梓した『野球と戦争――日本野球受難小史』の姉妹編にあたり、敗戦直後から2リーグ制確立に至るまで、奇跡的な復興を遂げたプロ野球の動乱期が、数多くの資料と証言をもとに丹念に描かれている。この2冊の本を執筆したきっかけを山室氏が語る。

「僕は九州の野球少年で、学生時代から野球の歴史を調べてみたいと思っていました。読売新聞に入ってからは、東京本社社会部の警視庁担当時代に起きた『黒い霧事件』('69年)を取材した際など、様々な折に、鈴木惣太郎さんや鈴木龍二さん、小西得郎さんをはじめずいぶん多くの野球人から、昔の野球の話を聞くことができた。また、好む好まざるにかかわらず巨人軍代表になってからも、いろんな方にお話を伺いました。大げさに言えば40年以上、恐らく300人以上の方にコツコツ取材してきた材料があり、いつかは書きたいと思っていたんです」

選手引き抜き、球団の集合離散……。2リーグ制移行時の真相。

 本書を支えているのは、今まで世に出ていない新資料「鈴木惣太郎日記」だ。鈴木は戦前、ベーブ・ルース来日や巨人軍の前身「大日本東京野球倶楽部」の創設に尽力し、戦後もプロ野球復興に奔走した球界の大功労者。日記には、知られざる事実が多く書き残されていたという。

「'25年から'82年に亡くなる直前まで綴られた、本当に貴重な歴史的資料です。ご遺族に見せていただいたのは、昨年3月のことでした。そのときもうほぼ書き上げていたのですが、それから全面的に手を入れました。執筆にあたっては、なるべく正確な史実を残したいという思いと、野球を通じて多少とも近現代史の理解につながれば、という思いがありました」

 中でも特に目を惹くのは、2リーグ制に移行する激動の時代に繰り広げられた選手引き抜き合戦や、球団の離合集散に関する生々しい記述だ。

「当時、プロ野球に参入しようという動きが熱病のように広がっていて、朝日新聞や日活、小田急など、数え上げればきりがないほど、いろんな企業の名前が上がっていました。この時期のことを正確に書いたものがなかっただけに、読んで頂ければ面白いのではないでしょうか」

【次ページ】 清武前代表と巨人・読売の争いをどう見ているのか。

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