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<UTMF密着ドキュメント> ウルトラトレイル・マウントフジ体験記~日本一過酷な「旅」の果てに~
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byMami Yamada
posted2013/04/24 17:10
富士を囲む「偉大な自然」に挑んだ39歳のランナーが
40時間に及んだレースの末に抱いた思いとは――。
昨年、雑誌Number Do『大人の山登り。~ゼロから楽しむ入門編~』から、
ウェブでは前半のみ配信していた「ウルトラトレイル・マウントフジ体験記」。
このほど4月26日から第2回大会が開催されるのに合わせ、全文公開します!
パリ・ダカールラリーの創始者・故ティエリー・サビーヌは言った。
「君が冒険を目指しているのなら、私はその扉まで案内をしよう」
2012年5月18日午後3時。僕は誰かに導かれた「その扉」を自らの手で開け、河口湖畔から始まる未知の世界に駆け出した。
日時:2012年5月18日~20日
距離:156km(STY: 82km)
累積標高:8530m(4209m)
制限時間:48時間(26時間)
参加人数:852人(1177人)
参加費:24000円(18000円)
UTMF。アナウンスが始まった'10年秋頃からこの日まで、もう何度も夢に見てきた100マイルという未踏の領域。そこに踏み出す恐れと不安。でも、それ以上にどんな世界が待ち受けているのか楽しみに包まれていた。
自分でもびっくりするくらい暢気な雰囲気でスタートすると、最初のエイドステーションA1(富士吉田市工業団地)まではゆったりマイペースで進む。その間、よく知った顔と何人も会った。並走しながら会話したり、一緒に写真を撮ったりしていると、あっという間にA1に辿り着く。タイムは想定通りの2時間20分。でも、アドレナリンが出まくっていたので、周りのペースに惑わされないように、20分ほど様子を見ることにした。
A2(二十曲峠)に向かう13kmには前半のヤマ場・杓子山(1597m)の直登がある。A1から約880mの標高差だ。この日、スタートした河口湖は快晴で気温20度。初夏を思わせる日差しだったが、5月の夜の山は一気に冷える。杓子山に差し掛かるときには陽も暮れ始め、用意していた防寒具を着込んでヘッドライトを装着した。いよいよ最初の夜が始まった。
選手を助ける給水、補助食、アドバイスなどのサポート体制。
この大会に向けて多くのランナー同様、僕も本番に近い装備で頭にライトを装着したナイトトレイルの練習を積んでいた。奥多摩の山々を27時間歩き通したこともあった。
序盤戦ということもあり、前後にいるランナーの勢いを借りて、あっという間に杓子山を攻略。スタートして5時間25分でA2にたどり着くと、A3(山中湖交流プラザきらら)までの下りの7kmは50分ほどで駆け下りた。
UTMFは選手1人に付き1人までサポートを付けることが出来る。サポート役は先回りして、決められたエリア内で選手に対して様々なサポートをする。荷物の出し入れ、給水の補助、補助食の提供を始め、選手の顔色を窺いながら調子の良さを判断したり、適切なアドバイスを行なう。選手側からすると、このような物理的なサポートはもちろんだが、精神的にもありがたい存在だ。
僕がディレクターを務める駒沢の加圧トレーニングスタジオ「park」ではこの1月からUTMF対策講座を開設し、60人近いランナーのトレーニングを支えてきた。その中から希望した18名を支える3名体制のサポート隊を結成。そのサポート隊が最初に待ち構えていてくれたのがA3だった。