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阪神を支えるルーキーが
鳴尾浜で見つけたもの。
~榎田大樹、闘志の源~ 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/09/15 06:00

8月28日のヤクルト戦。8回表を無失点に抑え、藤川へと繋ぐ完封リレーで、勝利に貢献

8月28日のヤクルト戦。8回表を無失点に抑え、藤川へと繋ぐ完封リレーで、勝利に貢献

 史上稀に見る混戦になってきた今年のセ・リーグ。

 90試合以上を消化した時点で上位チームが3.5ゲーム差以内にひしめいているのは'73年以来、38年振りのこと。ヤクルトが8月に7勝15敗と失速したことが原因だが、下位に沈みそうで沈まなかったのが阪神だ。抑えの藤川球児に繋ぐ中継ぎ陣の踏ん張りが大きい。その中心にいたのが、右の小林宏、左の榎田大樹、二人の新加入組だった。

 なかでも新人の榎田は、開幕5試合目の中日戦で一軍デビューすると、切れのいいスライダーと内角をつく大胆な投球で、首脳陣の信頼を勝ち取った。一時は“先発で”と言う声も上がったが「中継ぎに絶対に必要な存在」という久保康生投手コーチの考えもあり、藤川へと繋ぐ勝ちパターンを任されるようになった。

 小林西高、福岡大を経て、社会人東京ガスから入団。'09年の都市対抗では若獅子賞を獲得するなど、社会人に入って急成長した投手だ。

「役割分担がしっかり分かっている有り難い存在」と久保コーチ。

 7月29日の横浜戦。チーム最多となる33試合に登板していた榎田は、同点打を浴びてしまう。疲労蓄積というチームの判断もあり二軍での調整を余儀なくされた。甲子園にほど近い鳴尾浜で練習する中、聞こえてくるのは高校球児たちの声。そのとき感じたのは、「甲子園に出場もしていない自分が、球児たちの聖地を本拠地にして戦える幸せ」だった。

“一軍で投げる喜び”を改めて知った男は猛暑の中、徹底して走りこんだ。8月12日に再び一軍に戻ったときには、一段とたくましくなった榎田の姿があった。この後8月は10試合に登板し、2失点こそしたものの自責点ゼロと奮闘している。

 かつて野茂英雄が、新日鉄で投げていた社会人時代を思い出しながらこんなことを語ってくれた。

「社会人出身の選手は、都市対抗の予選が始まる頃に調子を合わせてくるので夏場には強いんですよ」

 プロ野球は、秋の声を聞くと連戦が続く勝負のときが始まる。のし上がってくるのは中継ぎ、抑えの勝ちパターンを持っているチームだ。藤川とともに試合数の半分近くに登板し結果を残している新人を、久保コーチは「役割分担がしっかり分かっている有り難い存在だ」と手放しで評価している。榎田も「今は投げられるのが嬉しい」と語り、クライマックスシリーズ進出に闘志を燃やしている。

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