「ギーエンの行為は一線を越えていた」とウィーバー。

　実は冒頭で紹介したウィキペディアの「野球の不文律」にも以下のような項目が含まれている。

＜打者は本塁打を打っても立ち止まって打球の行方を追ったり、大げさにガッツポーズをとったり、わざとゆっくりとダイヤモンドを回ってはいけない＞

「今までこんな行為をしたこともないし、誰かにぶつけたり、ケガさせようなんて試みたこともない。自分は相手チームに敬意を払っているが、明らかにギーエンは敬意を失した行為であり、一線を越えていたと思う」

　試合後にウィーバーは以上のように経緯を説明したが、彼の危険球は野球アナリストのほぼ全員から“プロとしてあるまじき行為”との批判を受けた。確かに決して誉められるものではないが、何度リプレーを見ても故意に打者の頭上に投げたのは間違いないとしても、ぶつけにいっているようには見えないし、ギーエンの立ち振る舞いも挑発行為として受け取られても仕方がないだろう。

互いに譲れない、メジャー選手としてのプライドと正当性。

　だがもう一方の当事者であるギーエンも、自分の正当性を主張しているのだ。

「（オルドネスだけでなく）どんな打者だってポール際の打球はフェアかファウルを見極めるまで待っている。それなのにウィーバーはベンチに戻ってからも『走塁しろよ！』と叫んでいた。自分もこの世界で長年やっている。敬意を払う選手には自分も敬意を払うが、そうでない選手に対してする必要はない」

　ギーエンが話しているのは、前述の3回にオルドネスが放った本塁打のことだ。打球はレフト線ポール間際に飛んだため、オルドネスはそれを見極めるためすぐに走塁をしなかった。その回を投げ終えベンチに戻ったウィーバーは、何か不満をぶつけるような動きをしていたが、それをテレビカメラも捉えていた。

　ギーエンの説明では、どうやらウィーバーは相手ベンチに対しても何かを叫んでいたようだ。そして6回の第3打席でセンター・フライに倒れたオルドネスが、一塁を回りながらベンチに戻る際に、さっきの仕返しとばかりにウィーバーに何かを囁いたという“伏線”まであったという。

　要するにギーエンからすれば、ウィーバーが先に敬意を失する行為をとっていた、ということらしい。

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