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監督人事に見る
ブンデスリーガのお家事情。 

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安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2009/06/11 06:01

監督人事に見るブンデスリーガのお家事情。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

2008年の5月に2010年までドルトムントと契約を結んだユルゲン・クロップ。1990年から2001年までマインツに所属しFWとしてプレーしていたことも

 今季ブンデスリーガの観客動員数は驚異的だった。新記録となる1試合平均4万2539人は当然世界1。トップのドルトムントは7万4828人で、11チームが平均4万人以上を集客。収容人数がさらに大きいスタジアムがあれば5万人台に乗っていたかもしれない。1試合当たりのゴール数2.9はスペインと並んで欧州最多。攻撃的なサッカーを象徴する数字だ。

 肝心の試合も例年にない面白いレースが展開された。最終節まで4チームが優勝の可能性を残し、降格組も未定という展開は40年ぶりの珍事である。6チームが首位の座を奪い合った。しかしそこには常連バイエルンとシュツットガルトの名前はなく、新興勢力のヴォルフスブルクとホッフェンハイムがもっぱら話題をさらう形となった。前半戦9位のチームが優勝したのは史上初。勝ち点31での残留(ボルシアMG)も史上初。これまでは最低でも勝ち点34を取らなければ2部に陥落していた。

 残留、国際大会出場、降格などの結果により大きく事態が変化するのが監督人事である。前回のコラムで「マガートの復讐劇」を紹介したが、ああいったサクセスストーリーはそうそうあるものじゃない。むしろ、ドロドロの愛憎劇が当たり前といったところだ。

最終戦だけ。わずか5日間だけの監督契約まで現れた。

 例えばビーレフェルトである。33節時点では16位と降格圏内、しかし最終節で勝てば残留可能と微妙な位置にあった。ところが、焦ったフロントは「フロンツェック監督にはもう任せられない」と、最終戦の直前にクビを通達。代役として64歳のベルガーを指名。「残留できたらボーナス10万ユーロ(約1300万円)。契約期間は5日間」の条件を付けて強引に現場に引っ張り出した。

 交渉の場でベルガーが最初に質問したのは、「今季で契約が切れる選手は何人いるか?」だった。契約切れの選手は次の移籍先に関心が移っているため最終戦に集中できない、と心配したのである。対象者は1人しかいなかった。「では、やってみよう」と決めたベルガーだが、試合は2-2で引き分け。他の下位2チームが揃って勝利したことで、陥落の憂き目にあってしまった。試合後、「練習らしい練習が出来ず、戦術会議も中途半端、選手の特徴と性格も分からなかった」と語ったが、そうだったらフロントは前監督に最後までチームを委ねておいたほうが良かったではないか。

フランクフルトの監督はファンに追い詰められ怒りを爆発。

 フランクフルトのフンケル前監督は、ファンとフロント両方から嫌われたことで自ら墓穴を掘ってしまった。熱狂的なファンを抱えることで知られるチームの目標はヨーロッパリーグ(旧UEFAカップ)出場権獲得だった。だが終わってみればリーグ13位。これにファンが激怒する。空気を察したフロントは急きょ、監督と話し合いの席を設けた。だが以前から理事会との折り合いが悪かったフンケルは、5時間以上かけての話し合いの場で、それまでの不満を言葉と態度で爆発させてしまう。「チームもファンも私という人間に敵意を抱いている。よし、分かった。辞めるのが最良の選択だ」と監督を退くことになったのだ。こういう場合、契約内容が気になるが、来年まで契約期間が残っているため、フンケルには今後1年間で計100万ユーロ(約1億3000万円)がクラブから支払われるという。

 レバークーゼンのラバディア前監督はファンから愛された好人物。だがリーグ戦で一時首位を奪ったものの9位に降下、またDFBカップでも決勝で敗れたため、当然責任を問われることになった。しかしファンは、ラバディアの指導力よりもフェラーGMのやり方を批判した。シーズン中、新しいアシスタントコーチの導入を意図するなどして現場を混乱させたからである。言葉選びでかなり問題があったのにGMは自らの責任についてはいっさい語らず保身を図っている。ラバディアへの批判も始めた。これには当人もカンカンだ。

<次ページに続く>

► 【次ページ】 シーズン途中の監督解任が多いブンデスリーガの傾向。

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