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監督人事に見る
ブンデスリーガのお家事情。 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byBongarts/Getty Images

posted2009/06/11 06:01

監督人事に見るブンデスリーガのお家事情。<Number Web> photograph by Bongarts/Getty Images

2008年の5月に2010年までドルトムントと契約を結んだユルゲン・クロップ。1990年から2001年までマインツに所属しFWとしてプレーしていたことも

シーズン途中の監督解任が多いブンデスリーガの傾向。

 今季は昨季同様、監督6人がシーズン終了を待たずに解雇された。2年前の12人、3年前の11人に比べれば少ないほうだが、過去10年間の統計では平均的な数値である。ところで、解雇された監督は次の就職先に困らないのだろうか?

 心配ない。フンケルはレバークーゼンの、ラバディアはハンブルガーの、フロンツェックはボルシアMGの監督候補にさっそく名前があがったのである。フランクフルトは後継監督候補にスロムカ(元シャルケ監督)、ドル(元ドルトムント監督)、スキッベ(元レバークーゼン監督)をリストアップ。ハンブルガーは会長が前日にラバディアと会って相談していたが、代理人から「ベルリンのファブレ監督がチームに不満を持って辞めたがっている」と打診された。

 名の通った監督は引く手あまた、というわけだが、こうした流れから分かるのは、各チームとも経験を積んだ監督にますます傾倒しているということである。いわゆる新米監督の入る余地がないのだ。

ベテラン監督ばかりが増え、若手指導者が育たない。

 2部リーグMSVデュイスブルクのノイルーラー監督はこの状況に、「驚かない。当然だ」と言って、次のように解説する。「バイエルンを預かったクリンスマンが大失敗しただろ。つまり、彼のような『一度やってみたかった』の初心者に任せるのは、リスクが高すぎるってことだ。だからこそ現場を任せられるのはベテラン指導者、となるわけだ」

 6月になり新監督人事が次々と決まった。ラバディアはハンブルガー、ハインケスはレバークーゼン、フロンツェックはハンス・マイヤー前監督(67歳)の後を継いでボルシアMGをそれぞれ来季より指揮する。その他にも、マガート(ヴォルフスブルク→シャルケ)、フェー(シュツットガルト→ヴォルフスブルク)、ファン・ハール(AZアルクマール→バイエルン)といった新人事が決まった。ケルン、ハノーバーなど未定チームもある。

 なんだかんだで、リーグの半数近くで指導者が交代するわけである。病身の妻を案じて今季限りで身を引く予定だった64歳のハインケスは、「バイエルンの監督を務めて、私は内面で燃えるものを感じた。新たな挑戦を続けたくなった」と動機を語った。これでは“新米”が入る余地がますます狭くなるというものだ。

大人気のクロップ監督は41歳にしてベテランの妙。

 ところで現在、リーグで最も若さを強調されているのはドルトムントのクロップである。浪人中のスロムカと同じ41歳ではあるが、クロップの場合は30歳そこそこの年齢で選手兼監督として指導者の道に入った。年季ではすでにベテランなのだ。クロップの軽快な喋りと明るい性格は、非常にユニークである。『ドイツ人監督=怖い、堅い』といった旧来のイメージをいい意味で壊してくれている。これにいちばん喜んでいるのが営業担当者だ。なんと、先ごろ売り出したシーズンチケットに前年比20%増の申し込みが殺到し、約5万枚が完売する勢いなのである。「料金を5%値上げして売れ行きを心配していましたが、昨季はホーム無敗やら監督のキャラが大うけしていっそう人気が高まったのですよ」

 これも監督の1つの功績……、いや本当の功績というのはやはり『最終順位』だろう。

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ミヒャエル・フロンツェック
ブルーノ・ラバディア
ヨルグ・ベルガー
ユルゲン・クロップ
ビーレフェルト
フランクフルト
レバークーゼン
フリードヘルム・フンケル

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